もう面倒事3つ
「それで? まさかあたしを探しに来たの?」
「ん? まあな」
話題を変える為にオルフェが冗談めかして言えばキコリはそう返し、思わずオルフェは「うっ」と唸る。
「なによ、この寂しがり。ちょっとあたしが居なくなったくらいで」
「そう言われてもなあ……にしても此処、特に家具とかあるわけじゃないんだな」
「家具の必要性が何処にあるってのよ」
キコリの言う通り、ツリーハウスの中には何もない。
机も無ければ椅子も無いし、棚だって無い。
いや……箱は2、3個置いてある。だがそれだけだ。
「別にあたし達は料理もしないし、椅子になんか座らないし。ベッドだって要らないでしょうが」
まあ、確かにオルフェはいつもふわふわ浮いて寝ているか、うつ伏せでキコリの上に乗って寝ているかだ。椅子もベッドも必要はないだろう。
しかし、そうなるとキコリには1つ疑問が出てきてしまうのだ。
「なら、この家は何のためにあるんだ?」
「縄張りに決まってるじゃない」
「縄張り」
「此処が自分の縄張りだぞって主張しておけば、その中にあるものは勝手に持っていかないでしょ?」
「あー……なるほど?」
人間社会の場合はその縄張りがあるから何かあるかもと泥棒が入ったりもするが……妖精社会では違うらしい。
「じゃあ、ツリーハウスの外に置いてあるものは」
「勝手に持ってっていいってことよ」
「分かりやすいな……」
外にちょっと置いとくというのは妖精社会では「お好きにどうぞ」ということらしい。
その代わりにツリーハウスの中にあるものには手を出さない。
何とも分かりやすい文化だが、妖精という種族だから成り立つのかもしれない。
「見ての通り広いから、今後何か扱いに困るものが出ても置いていけそうね」
「そんなもの出るか……?」
「どっか行く度に面倒事に巻き込まれる男が偉そうに……」
「いや、否定はしないけど偉そうじゃないだろ」
偉ぶったことなんてたぶんないはず。そうキコリは抗議するが「うっさいわよ」と切り捨てられてしまう。
「変な人間2人に変なゴブリン。もう面倒事3つでしょうが」
「ゴブリンは俺のせいじゃないだろ」
「今はそうだけど。どうせ……」
「ゴブリンに興味あるの?」
「えっ」
入り口から覗いていた妖精の1人がキコリにそんなことを聞いてくる。
「最後に見たのって昨日だから、まだこの近くウロウロしてるんじゃないかなあ」
「最期って……」
「たぶん巣作ってるんだと思う」
「この近くに作られても邪魔だよねー」
「ねー」
頷きあう妖精たちからキコリはオルフェに視線を向ける。
「……やっつけろってことか?」
「でしょうね」
やっぱり面倒事になったじゃない、というオルフェに……キコリは「そうだな」と返すしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます