変な気ィ回すんじゃないわよ
当然だが、ツリーハウスに梯子はない。
キコリはどうやって登ろうか考えて……木を登ることを選ぶ。
「あれー? ドラゴニアン、飛べないの?」
「あー、まあな。俺には翼とかないし」
「翼なんかなくても飛べるよねー」
「ねー」
そんなことを言われても出来るはずもない。
空を飛ぶ魔法でもあれば出来るのかもしれないが、そんな魔法を本で見た記憶はない。
キコリが再度木を登ろうとすると、妖精たちが近づいてくる。
「しょーがないなー、運んであげる!」
「飛べないならしょーがないよねー」
「ねー」
妖精が3人がかりでキコリを持ち上げようとして……持ちあがらない。
まあ、当然だろう。うーん、と唸っていた妖精たちは「みんな集まれー!」と仲間を呼び始める。
そうしてたくさんの妖精たちが面白がってキコリを掴み、持ち上げてツリーハウスの入り口まで運ぶと……そこにいたオルフェと目が合う。
「……何してんの?」
「運んでもらってる」
「でしょうね」
そうして妖精たちにツリーハウスの中に降ろしてもらうと、やりきった顔の妖精たちがハイタッチを始めてしまう。
「やったね!」
「やったー!」
何とも自由で楽しそうだが……これでキコリが人間だったら、こんな親切どころか命を奪いに来るのだから両者の差は埋めがたい……のだが。
キコリはそこで、ふと思う。
(俺は人間やめてるけど、姿は人間だよな。だったら人間に多少は慣れてたり……いや、ないか。関わりたくないって言ってたし)
しかし、聞いてみる価値はあるだろうか。聞いたところで何が変わるわけでもない。
そう考え、キコリは近くにいた妖精に「なあ」と声をかける。
「なあに?」
「もし人間が仲良くしたいって言ったらどうする?」
「燃やすー」
「凍らすね」
「刺すかなあ」
「溶かしちゃう」
「殺すよ!」
一瞬の迷いすらなく多種多様な……実質「殺す」一択だが、そんな返答が妖精たちから帰ってくる。
「馬鹿ねえ。分かり切ってるじゃない」
「いや、そうだけどさ……一応聞いてみたかった」
「何よ。人間と妖精が仲良くしてほしいとか、そういうアレ?」
「違うけどさ。妖精側が仲良くしたいとか興味あるとかだったら俺にも出来ることがあるんじゃないかと思ったんだ」
「ふーん……」
オルフェはそれを聞いて「人間の立場から、ではないわけね……」と思う。
(ドラゴン側からの視点で、かしらね。本人にはそういう意識はないんでしょうけど)
人間ではなく妖精への配慮。平等な視点、とも言えるが……あまり人間らしくない思考ではある。
ただ、キコリは元々そういう感じであった気もする。
だからオルフェとしても断言はできない。出来ないが……。
「変な気ィ回すんじゃないわよ。疲れるだけよ?」
「かもな」
だからこそ、深く突っ込むことはしない。
あまり触れるべきことではないと、そう直感したからだ。
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