すっごい変

 それに、今妖精村は普通の手段では見つからないし入れない状態だ。

 どれだけ冒険者がウロウロしていようと、妖精に近づくことも出来ないだろう。

 もし例外があるとしたら……。


「あのさ。しばらく人間がウロウロしてるかもしれないけど、此処から出ないで無視してくれないか?」

「え? いいよー」

「関わりたくないもんねー」

「ねー」


 妖精たちは意外にもアッサリとそう頷いてくれるが、もしかするとキコリの場合は出会うタイミングが最悪だっただけで、元々そういうものなのかもしれない。

 そんな納得をキコリがしていると妖精の1人が「あ!」と思い出したように声をあげる。


「そういえば、最近ゴブリンも増えて来たよね」

「増えた増えた!」

「ねー」


 そういえば確かに、森の中にゴブリンが居た。

 ダンジョン化したせいで来なくなるかと思っていたが、そんなことはなかったようだ。

 しかし、どのルートから来ているのだろうか? ワイバーンの渓谷や元妖精の森が空白化したのだから、そこに住んでいても良さそうなものだが……そこには別の何かが住んで追い出されたのだろうか。


「ゴブリンか……確かに此処に来る前にも戦ったよ」

「あ、そうなの?」

「アイツ等ウザイよねー」

「ねー」


 どうやらゴブリンのモンスターとしての地位は相当に低いらしいが……人間とどっちのほうが嫌いなのかは少しばかり気になるところではあった。


「それに変なゴブリンも混ざってたし」

「いたねー」

「ねー」

「変なゴブリン? ホブゴブリンか?」


 ホブゴブリンにはあまり良い思い出はキコリにはないが……流石に今更負けはしないだろう。

 そんなことを考えながらキコリが聞けば、妖精たちは首を横に振って否定する。


「違うよー?」

「なんかねー、ゴブリンっぽくないゴブリン」

「ねー」


 そんなことを言われてもキコリとしてはよく分からないが……まさかビッグゴブリンのような異常進化体だろうか?

 だとすると、また何かが起こる予兆かもしれないとキコリは気を引き締めて。


「オドオドしてた。すっごい変」

「ゴブリンってもっとふてぶてしいもんね」

「ねー」


 ふてぶてしくない、オドオドしたゴブリン。

 なるほど、それは確かにあまりゴブリンらしくはない。

 キコリにとってゴブリンとは悪知恵の働く「モンスターらしさ」を体現したような相手だ。

 まあ、オドオドしていたから弱いというわけでもないだろう。そういう偽装の可能性だってある。

 しかし……妖精が言うからには確かに変なのだろう。

 気をつけなければならない。そう考えて……キコリはふと、オルフェが居なくなっていることに気付く。


「ん? オルフェは?」


 キコリの問いに、妖精たちは一斉に木の上を指差す。

 そこは、妖精たちがキコリとオルフェの家だと言っていた、ツリーハウスだった。

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