命知らずだよな

 キャハハ、と楽しそうに木の実に集まっている妖精たちを見て、キコリは思わずオルフェを見てしまう。


「前々から思ってたけど……妖精って、木の実が好きなのか?」

「嫌いじゃないけど。分かるでしょ? 大体ああいうノリなのよ」

「オルフェ見てそれは分かんないかな……」

「あたしはオトナなのよ」


 フッと笑うオルフェにキコリは曖昧に頷くが……まあ、確かにオルフェは他の妖精とは大分性格が違う気がした。オトナかどうかと言われるとキコリには判断しがたいが……。


「そういえばドラゴニアン、雰囲気変わったね」


 ナッツを齧っていた妖精の1人が飛んできてそう言えば、他の妖精たちも飛んでくる。


「あ、ほんとだ」

「なんか前よりカッコよくなってる気がする」

「違うよ怖くなったんだよ」

「人間臭いの完全に消えたよねー」

「はは……」


 やはり妖精にはキコリが「どういうもの」か感覚で分かるらしい、とキコリは気付く。

 不完全なドラゴンクラウンを持つ「人間」であった時と完全なドラゴンクラウンを持つ「ドラゴン」である今。その違いを感覚で把握されている。

 恐らく変装程度では簡単に見抜くのだろう、それが妖精独自の感覚なのかまでは分からないが……。


「久々に様子を見に来たんだけど、その感じだと変わりは無さそうね」


 オルフェがそう言えば、妖精たちは顔を見合わせてしまう。

 何かあったのか。そう思わせるその様子に、キコリは「何かあったのか……?と聞いてしまう。


「何がっていうか」

「ねー」

「なんか最近、人間が森の中ウロウロしてるんだよねー」

「何か探してるっぽいよ」


 森の中で探すような何か。まさか……妖精だろうか?

 キコリと妖精に関する話についてはセイムズ防衛伯に話してはいるが、そこから王都に報告が行った際に、その周辺から漏れた可能性はあるだろうか。

 いや、ちょっと頭が回ればダンジョンでキコリとオルフェが出会ったことくらいは予想がつくはずだ。

 それとワイバーンの件を重ね合わせれば……他の場所に妖精が移動したと考えるのは普通だろう。

 しかし、そう考えるとキコリは思ってしまうのだ。


「妖精探してるんだろうけど……命知らずだよな」

「死にたいのかしらね」


 キコリだって初見で殺されかけたのだ。

 それでも生きていたのはドラゴンクラウンのおかげでしかない。

 というか、妖精が危険だというのは知れ渡っているはずだ。

 それなのに妖精を探していそうな人間が出るというのは……。


「妖精と人間が仲良くできるって勘違いしたのか……」


 面倒なことになったな、とはキコリも思うが……だからといって出来る事もないのが実際のところだ。

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