お土産持って来たんだ
やがて新妖精村……であるはずの場所に近づくと、オルフェが「あー」と声をあげる。
「完成したみたいね、村」
「え? 何も見えないぞ?」
キコリの視線の先にあるのは、他と同じ森の風景だった。
だが……確かに場所はこの辺りだったようにキコリは記憶している。
ならば、これはどういうことなのか?
「結界張ったんでしょ。ワイバーンのこともあるし、人間の領域も近いし」
「へー、そんなことできるんだな」
「まあね。簡単じゃないけど……つーか、これじゃあたし達も入れないけど」
まあ、簡単に出入り出来たら意味がないが……壁のようなものなのだろうか?
キコリは試しにと手を伸ばしてみるが、特に何もない。
「何もないぞ?」
「何かあるって分かってどうすんのよ。馬鹿なの?」
「いや……そうだけどさ」
「誰かが偶然近づいても気付かない……って感じの魔法ね。まあ、中々に手間がかかるやつよ」
「ふーん……まあ、入れないなら仕方ないな。帰るか?」
「まあ、そうするしかないけど」
オルフェがそう言った矢先。何もない場所から妖精がひょっこりと出てくる。
「あ、やっぱりオルフェだ! そっちのドラゴンは……なんか前に居たドラゴニアンと似てるね!」
「あー、いや、本人なんだ」
「へー、そうなの? そっかー」
「そんなのはどうでもいいのよ。入れてくれる?」
「いいよ! はいこれ!」
妖精がキコリとオルフェに握らせたのは、赤く小さな宝石のような何かだ。
砂粒のような大きさだが……魔石の欠片か何かであるように思える。
それをオルフェが飲むのを見て、キコリも飲み込むが……そうすると、目の前の景色が霧が晴れるかのように変わっていく。
「……これは」
「おー、よく出来てるわね」
そこにあったのは、幾つかのツリーハウス。
それだけではない。その空間だけ植物が木も草も妙に元気で、明らかに「何か」が違うと理解できてしまう。
そう……目の前に広がっているのは、確かに隠すのが理解してしまう程度の何かを感じる「村」だった。
「オルフェの家も作ったよー!」
「ドラゴニアンも住めるよ!」
「あ、俺の家もあるんだ」
「オルフェと住めるよ!」
「あ、住めるってそういう……」
妖精たちが指差しているのは、一際大きいツリーハウスだったが……なるほど妖精では無く人間サイズで造られている。
「余計な気ィ回して……それよりキコリ。あれ出してあげれば?」
「あ、ああ。お土産持って来たんだ」
言いながらキコリが荷物袋からナッツの袋を出していけば、妖精たちは袋の紐を解いて「きゃー」と声をあげる。
「木の実だー!」
「ちょっと人間臭いけど木の実だ!」
「皆ー! 木の実、お土産だって!」
わー、と歓声をあげて飛んできた妖精たちが木の実の袋に群がっていくが……それに飲み込まれる前に、キコリはオルフェに引っ張られるようにして数歩引いた場所に移動できたのだった。
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