ギンユーシジンって何?

 1週間。それはニールゲンでぼうっとしているにはあまりにも長い時間だ。

 ならばどうするか。キコリとオルフェは話し合って、妖精たちに会いに行くことにした。

 あれから全く会っていないし、オルフェの里帰りも兼ねて……ということだ。


「……やっぱり木の実か?」

「でしょうね」


 とはいえ、手ぶらもどうか。そんな思考が働いた結果、何かお土産になるものを探していたのだが……下手なものを持って行っても「人間臭い」と焼かれて終わりになりそうなので、自然と果物や木の実などの食べ物に偏ることになる。

 その中でもオルフェが木の実が好みなのを考えれば、間違った選択ではないとキコリは思っていた。

 店の前に置かれた幾つもの樽の中には木の実がどっさりと詰め込まれているが、その中からキコリは普段オルフェが好んで食べているものをピックアップしていく。


「えーと、これと、これと……あ、それもお願いします。量は大きめの袋に一杯ずつで」

「はいよっ!」


 元気の良い店主に代金を渡せば、店主は袋に木の実を詰め始め……チラリとオルフェを見る。

 さっきもずっとオルフェを見ていたが、余程気になるのだろう。


「……そっちの妖精さんが食うのかい?」

「まあ、これから冒険に行くので」

「そっか。なんかイメージ通りなんだなあ」


 頷く店主にオルフェが小さく「何こいつ……」と呟いていたが、店主には聞こえていないようだった。

 そうして受け取った木の実を荷物袋に詰め、他にも色々と必要なものを購入していくが……皆オルフェに妙に好意的で、オルフェはそれを物凄く気味悪がっていた。

 英雄門を通ると初心者らしき冒険者が妙に目につくが……やはりオルフェに視線が集まる。

 それを無視して森の中へと進んでいけば、ようやく人の視線が無くなって。

 そこでオルフェは「はあああああああ……」と大きく溜息をつきながらキコリの頭をペシペシと叩く。


「なんなの、マジで。人間どもの、あの視線気持ち悪いんだけどー?」

「好意的な視線だったと思うけどな」

「人間に好かれても1つも嬉しくないのよね」

「ハハ……」


 妖精は人間嫌い。少なくとも初手で殺しに来る程度には人間嫌いであり、オルフェもそれは変わらないし、キコリがいるから我慢しているのだというのはキコリ自身がよく知っている。


「まあ、昨日アリアさんが言ってた吟遊詩人の歌ってやつだろうなあ」

「ていうかギンユーシジンって何?」

「何って言われるとなんだろうなあ……旅の音楽家?」

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