俺は何故
「ヒール!」
だが、即座にオルフェのヒールがその傷を僅かであるが癒して。
「ソードブレイカー!」
キコリの振るったソードブレイカーを纏う斧が剣を破壊していく。
「オルフェ、ありがとう!」
「こうなると思ったわよ馬鹿! ヒール!」
思い切り力を籠めたヒールが先程よりも強い光を放ち、キコリの傷を癒していく。
その間にもキコリの振るう斧は全身鎧たちを叩き壊し……ソイルレギオンから困惑したような声が上がる。
「馬鹿な」
「たかがリビングメイル1体に苦戦していたはず」
「これだけの数を駆使して、何故押し潰せぬ」
「不可解だ」
「不条理だ」
言われて、キコリも「まあ確かに」と思わないこともない。
あの「特別製」1体に追い込まれたのは確かで、殺されかけもした。
というかさっきもだ。キコリ1人では死んでいただろう。
「簡単だろう、そんなの」
だからこそ、キコリは斧を振るいながらソイルレギオンへと答える。
「俺は1人じゃない。支えられてると知ってるんだ。だから強くなる」
「答えになっていない!」
ソイルレギオンから更なる鎧の群れが生まれ、押し寄せる。
「1人ではないから強くなるなら、俺は貴様よりもっと強くなっているが道理!」
「だが見よ、貴様は個で我に勝ち数で寄せても受け止める!」
「この不条理を何とするか!」
「なんだ、そんなことか」
キコリはソイルレギオンの問いかけに、くだらないといった調子で答える。
そんなものはキコリにしてみれば、不条理でもなんでもない。
考えなくても分かる、明確なことだ。
「だってお前……たくさん居ても1人じゃないか」
「……っ!」
ソイルレギオンは1人だ。たとえ群体であるのだとしても、統一された「個」なのだ。
それ故に意思決定が速く、それ故に統率された動きを出来る。
能力も文字通りに「レギオン」であり、その性質もあって非常に強力だ。
だが、1人だ。「自分」がたくさん集まったところで、そこに何かが生まれるはずもない。
「自分じゃ気付かないものはたくさんある。俺はそれに助けられてきた……ソイルレギオン、お前はどうだ?」
ない。
ソイルレギオンにそんなものは、ない。
どれだけたくさん居ようとも自分だから。
新しい何かなどあるはずもなく、何処までも「1人」で。
ソイルでありながら、この身は生命を育まない。
どれだけ町の真似事をしても、そこに根付くものもなく。
(いや、待て。俺は……俺は何故町の真似事などをしていたのだったか?)
ゲーム。そう、ゲームだ。
本当にそうだったか? そうだっただろうか?
俺は、俺は……。
「が、がががっががががががががが……」
全ての鎧が、ざらりと土に戻って。
集まり盛り上がり、巨大な金属製の大巨人へとその姿を変える。
「もういい。貴様を殺して喰らう。それには何の変更もない」
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