それが出来たのならば
創土のドンドリウス。それが主人たるドラゴンの名前なのだろう。
造られて、捨てられた。その辺りの事情は不明だが……。
「まだ、ドラゴンを目指してるんだな」
「そうだ。俺はドラゴンになる。貴様を喰えば、それに大きく近づくだろう」
「……どうかな」
実際、どうなるかは分からない。
ドラゴンクラウンを持つキコリを喰ったモノはドラゴンクラウンを持つのか否か。
ドラゴンスレイヤーの物語は所詮お伽噺。
だからこそ真実は分からない。分からないが……その真実を自分自身で確かめようなどとは思わない。
「オルフェ、下がっててくれ」
「嫌よ」
目の前で、全身鎧たちが剣を構える。
「俺の糧になれ、キコリ。知る限りでは最も弱そうなドラゴン」
「断る!」
「ならば、押し潰そう。個で敵わぬなら、数で磨り潰そう」
斧は効かない。だからブレイクで倒すしかない。ブレイクは、手から放つから。
キコリは、斧を捨てかけて。
……本当に?
そんな疑問と共に斧を握り、走る。
ブレイクは手から放つ……だけ?
ミョルニルは斧にも自分にも纏わせることが出来るのに。
なら、ブレイクは?
この斧は斧ではあるけれど、キコリの爪であり牙でもある。
ならば、それならば。
ブレイクを纏わせることだって。
「死ね……っ!」
無数の剣がキコリの鎧を貫き、キコリの命を貫こうと迫る。
キコリは、斧を振るって。その全てを叩き切るイメージを籠めて。
「ソードブレイカー」
輝く斧が、剣の全てを飴細工のように叩き壊す。
そして、それが出来たのならば。
「ブレイクッ!」
輝く斧が、ブレイクを纏わせた斧が……全身鎧たちを、砕き割る。
それでは終わらない。全身鎧たちは無数にいる。
その全てが「特別製」ではないだろう。だが、確実に紛れている。
「アクアストリーム!」
オルフェの放つ魔法の水流が全身鎧たちを押し流す。
その中の何体かは押し流される中でへこみ、潰されて。
無傷な全身鎧はそのまま起き上がる。
「やっぱり全部が『そう』じゃないってわけね!」
「オルフェ、本当に無茶しないでくれよ!」
「アンタがそれ言う!?」
怒られてしまったが、キコリの本心ではある。
だからこそ、キコリはこんな所でオルフェを失いたくはない。
絶対に生きて帰って、またニールゲンに戻る。
その強い意思が身体をこの町に来てからは一番と言えるほどに動かして。
オルフェの魔法が「特別製」を選別して、「特別製」をキコリが壊す。
そうして暴れ回る中で……「特別製」ではない全身鎧の持っていた剣のうちの何本かが、その手を飛び出して……「特別製」にブレイクを放った直後のキコリを、鎧ごと切り刻んだ。
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