こっちから来てやったぞ
「いや、ほんと……かなり嫌だぞ、それ。どうしよう」
「あたしが取ってきてあげるわよ」
「……ほんと助かる」
オルフェが手伝ってくれるなら、外から出入りなんていう怪しい真似をせずとも、1階の部屋の中で荷物の受け渡しが出来る。
キコリとしては怪しい人物扱いされない、渡りに船な申し出ではあった。
「ま、そうは言っても持っていくものはあまりないけどな」
「そうね」
最低限の荷物があればそれでいい。
キコリとオルフェはそうして荷物袋を2階から回収すると、そのまま英雄門へと向かっていく。
この状況ではあるが、冒険者は基本的に毎日が稼ぎ時であり、それはこのイルヘイルでも同じだ。
稼ぎやすいなら稼ぎやすいなりの刹那的な暮らし方をする者、自分に更なる投資をする者、あるいは貯める者……様々だが、まあ基本的に「今日はやめておくか」という思考はあまりない。
そういうわけで、キコリが英雄門を出ても特に目立ちはしない。
転移門を潜ればソイルゴーレム狩りに精を出す者達が多く、その先を抜ければ生きている町に辿り着く。
とはいえ、そこにはあの全身鎧たちも待っているはずだが……。
「さ、行くか」
「そうね」
覚悟はとっくに完了している。
生きている町へと続く転移門を抜けて、見た光景は。
「……なんだコレ」
完全に復活した、生きている町の姿。
キコリとオルフェが壊した全てが元に戻っていて。
―ハ、ハハハ。来たのか。そうか、そうだろうな。俺でもそうする―
聞こえてきたのは、あの時の声と全く同じ声。
やはり、此処に「何か」が潜んでいるのだろう。
だが、何処に?
生きている町……ではないだろう。壊して何も反応がないということは「町自体」はそいつではない。
「俺を殺すって言ってたよな。出てこい、こっちから来てやったぞ」
―ああ、言ったとも。貴様を殺し、喰らう。だが……姿を見せる価値は、あるかな?―
生きている町から飛来してくる、無数の刃物。
その全てが「生きている刃物」なのだろうが……キコリは慌てはしない。
「やるぞ、オルフェ」
「はいはい。ちゃっちゃと片づけるわよ」
天へと掲げるのは、手の平。その手に生まれるのは、輝ける槍。
「「グングニル!」」
2つの光の槍が炸裂し、飛来する刃物を爆発と共に打ち砕く。
生きていようとなんだろうと、所詮はただの刃物。
あの鎧剣士が持っていたような特別製のものでなければ何の意味もない。
次々と投げ放たれるグングニルは飛来するものを壊し、生きている町を壊して。
遠距離戦では、キコリとオルフェが圧倒的優勢を見せつけていた。
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