イメージは正確に出来てるんだ

―ハ、ハハハ! この程度では無理か! ならこれはどうかな!―


 声と共にガシャガシャと全身鎧たちが走ってくる。

 その手には様々な武器を持っている。あの全てがキコリの斧を斬り鎧を裂き、こちらの魔法を防ぎ攻撃をも防ぐものなら確かに脅威だ。


「オルフェ」

「任せなさい! グングニル!」


 オルフェがグングニルを投擲すれば、鎧のほとんどが砕け……2体の全身鎧だけが残る。

 そして、キコリもまた走っていた。

 その手には斧はなく、しかし「破壊する」イメージだけは明確に持っていた。

 振り回される剣を、槍を避けて。

 キコリは2体の全身鎧に触れる。


「ブレイクッ!」


 両手から流し込まれたブレイクの魔法は、2体の全身鎧を破壊して。

 キコリは生きている町の方角を、じっと見据える。


「……やっぱりだ。あの鎧……無制限に作れるわけじゃないな?」


 それが出来るなら、最初の襲撃の時も何体かで襲って来ればよかったのだ。

 なのに、それをしない。

 最初は1体。次に襲ってきたのは、3体。そして今は、2体。

 たぶん、魔力の問題ではない。なら、制限のかかっている理由は。


「時間、だな? 強いのを作るには時間がかかる。だからグダグダ言って時間を稼いでるんだ」

―なっ……―

「お前がそれでいいならいいけどさ。いいのか? 俺は昨日この町を壊したんだぞ」

―それがなんだと……いや、待て。まさか―

「この町を更地にする為のイメージは正確に出来てるんだ。俺のブレイクで何処まで壊せるか……試してみるか?」

―ハッタリを……!―


 そう、ハッタリだ。

 ドラゴンになって「チャージ」をほぼ自動でできるようになったのと、魔力量が増えているのでブレイクの威力は上がっている。

 だが、それで「生きている町」を壊せるかといえば話は別だ。

 町のような広大な範囲に影響を及ぼそうとするのは、それだけで魔力を大量に使う。

 距離による魔力減衰論のような面倒な話を語るまでもなく、常識的に考えてキコリが今言ったようなことは使う事すら困難な「大魔法」と呼ばれる類のものになる。

 具体的に言えば、ドラゴンブレスを放つのとどちらがマシかというレベルになる。

 いや、規模と想定する威力を考えればドラゴンブレスのほうがまだマシだろう。

 ならば、そんなものを撃つとハッタリを言うのは何故か。


「出て来いよ。俺達が見えてるんだ……此処にいるんだろう?」

―ぬ、ぐ……ううううう!―


 そう、グングニルで「生きている町」を壊しても反応はなかった。

 だが……ブレイクで「町を壊すイメージ」を叩き込めばどうなるか?

 恐らく、影響があるのではないか。

 何故なら。この町の特性を考えるに、敵は……。


「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 生きている町が、大地が。大きくうねる。

 立っていられないくらいの地響きが起こって。

 巨大な何かが隆起していく。それは……大地そのものを人型ゴーレムにしたかのような、そんな見上げる程……という言葉では表せない程に巨大な、大巨人だった。

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