真夜中に響いた音

 やがて、最後の1体のソイルゴーレムが倒れて。襲撃を乗り切ったことに歓声が上がる。


「よくやった! 突然の襲撃ではあったが、見事退ける事が出来た! 諸君の勇気と鍛え上げた力に感謝する!」


 ギザラム防衛伯の声が響いて、再度の歓声が上がる。

 確かに他の襲撃が起こる気配もなく、これで全てが終わりであるように思えた。

 何故ソイルゴーレムが突然襲撃してきたのかという謎はあるが、それをいえばニールゲンに居た時のゴブリンの襲撃も「理由」などキコリは知らない。

 だからこそ防衛都市というものが存在するのだろうし、キコリ自身それには特に疑問を抱くはずもなかった。

 しかし、それでも「何故」ということは考えてしまう。

 あるいはこれは悪い癖なのかもしれないが……。


「何か心配事?」

「いや。なんでソイルゴーレムは此処を襲撃したのかって思ってさ」

「理由なんてないでしょ。ロックゴーレムも来てるんだし」

「……まあ、それもそうか」


 やはりそういうものなのだろう。

 これもまたキコリ自身が世界の常識に慣れていないだけなのかもしれない。

 そう自分を納得させると、ギザラム防衛伯の声が聞こえてくる。


「よし、勇者たちよ! 凱旋するぞ!」

「おおー!」


 一際大きな歓声が響き、ギザラム防衛伯に続いて冒険者たちが英雄門に向かって歩いていく。

 まあ防衛都市を守った勇者であることは確かだし、そうやって士気を保ってもいるのだろう。

 ギザラム防衛伯も手慣れていて、何度も取ってきた手法なのだろうとキコリは想像する。

 とにかく、キコリたちもその中に混ざり、英雄門から戻っていく。

 英雄門近くの広場まで辿り着くと「では解散!」という声が響き、冒険者たちがあちこちに散っていく。

 その様子を見て……キコリは軽く頬を掻く。


「考え過ぎだった……のか?」

「んー……」


 オルフェも首を傾げてしまうが、今のところそうとしか思えない。

 何しろ、こうしていても何が起こる気配もない。

 ならば、発生していた「おかしいこと」はソイルゴーレムの襲撃であり、それはもう解決した……ということでいいのだろう。


「ま、解決したならいいか。無駄に緊張しちゃったな」

「そうね」


 頷きあい、キコリとオルフェは自宅に戻る。

 肉を焼いて塩をかけたモノと野菜サラダを作って、食べて。

 風呂に入ってベッドに入れば、難しい思考も消えて失せる。

 明日は更地になった「生きている町」に行って、再度ロックゴーレムの出所について調査すればいい。

 そんなことを考えて、眠りについて。

 けれど……真夜中に響いた音によって、その眠りは脅かされることになる。

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