やっぱその魔法派手ね

 ソイルゴーレム平原に、人が居ない。

 その事実にキコリとオルフェは首を傾げる。

 この場所は稼ぎ場の1つということで、かなり人がいるはずなのだが……誰も居ない。

 それだけではない。ソイルゴーレムも出てこない。

 人が居なければ倒されないソイルゴーレムがウロウロしているはずなのに、居ないのだ。


「……オルフェ」

「分かってる。おかしいなんてもんじゃないわ」


 キコリとオルフェは、注意深く周囲を見回す。

 生きている町に人が居ないのは良い。あれだけ破壊活動をやっていれば当然だ。

 だが転移門で隔たれたこの場所に居ないのはおかしい。

 明らかに何かが起こっている。

 だが……それが「何か」までは分からない。

 分からないが……解明している暇は、ない。


「急ごう!」

「そうね!」


 キコリとオルフェは、次の転移門へと急いで。

 だがその眼前にソイルゴーレムが生まれ立ち上がる。


「邪魔だ……ブレイク!」


 ズドン、と。吹き飛ぶようにしてソイルゴーレムが崩れ去る。

 落ちる魔石には目をもくれず、キコリたちは急いで。

 そうして潜った転移門の先。そこには、ソイルゴーレムと戦っている冒険者たちの姿があった。

 先程会った全身鎧の冒険者も混ざっていて、かなりの激戦であることが伺える。


「足を狙え! とにかく倒して魔石を掘り出してやれ!」


 ギザラム防衛伯が指示を出している姿もあるが……大剣を振っている姿は歴戦冒険者の如くだ。


「俺たちも行こう!」

「はいはい。さっさと片づけましょ」

「ミョルニル!」


 キコリが斧に電撃を纏わせ投擲すれば、ソイルゴーレムの足を切り裂き倒れる。

 そこに他の冒険者たちが群がり、魔石を掘り返していく。


「ロックアロー!」


 オルフェの放った数本の石の矢はソイルゴーレムの胴体を貫き、そのうちの1本が魔石を見事貫き身体の外へと放り出す。

 そしてソイルゴーレムのうちの1体がオルフェを狙い拳を振り下ろして、けれどオルフェはそれをひらりと避ける。


「ばーか、デカブツ! そらっ、ロックアロー!」


 そうして放った石の矢はソイルゴーレムを貫いて。けれど、魔石には当たらなかったようでソイルゴーレムがブンブンと腕を振り回す。


「あ、ちょっ!」


 だが、その足をキコリが叩き切れば、倒れたソイルゴーレムに何度もオルフェがロックアローを撃ち込んでいく。


「ちょっとキコリ、アレ使わないの!?」

「いや、人前で使うには問題がな……」


 確かにブレイクを使えば一撃だが、扱いが禁呪なので人前では中々使えない。


「でも、そうだな。こっちなら……」


 キコリは手を空に掲げ、相手を打ち砕く槍をイメージする。


「グングニル!」


 放ったグングニルはソイルゴーレムを爆砕し、一撃で倒し切る。


「おー、やっぱその魔法派手ね!」

「まあな」

「こんな感じかしら……グングニル!」

「えっ」


 ソイルゴーレムを爆散させたオルフェは「ヒャッホー」と歓声をあげる。


「いいわねコレ! なんか構成に無駄が多いけど、派手なのは良い事よ!」

「そ、そうだな」


 やはり魔法ではオルフェには敵わない。

 いつか魔法の才能がないと言われたことを思い出しながら、キコリは次のソイルゴーレムへと向かっていく。

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