凄いスッキリすると思うんだけど

 生きている町の探索は進む。

 家、何かの店……通り過ぎていく間に多少のリビングアイテムによる襲撃はあるが、あの苛烈さはない。

 恐らくだが、テリトリーや攻撃してくる前提条件のようなものがあると思われた。

 やはりあの状況が特別。

 そう思わせる中で辿り着いたのは……以前話に聞いていた武具屋と思しき場所だった。

 確かに明らかにそうと分かる程人が集まっていて、今も丁度こちらに背を向けた獣人が戦利品と思われる兜を被っているところだった。


(……なんだ?)


 ふと感じたのは、違和感。この「生きている」町の稼ぎ場にいるとは思えない程の、静けさ。

 全員が鎧と兜を纏い、動きを確かめるようにガチャガチャとやっている。


「何こいつ等」

「分からん。だが……」


 キコリは油断なく斧を構えて。

 獣人のうちの1人が、兜のバイザーを下ろしキコリへと振り向く。


「此処に用事か?」

「そういうわけじゃないんだが……」

「そうか。悪いが今日の分は俺達が貰った。明日また頑張ってくれ」

「あ、ああ」


 そのままガチャガチャと歩き去っていく獣人の冒険者たちは……なんとも静かだ。

 欲しいものを手に入れたのであればもう少し喜んでもいいと思うのだが……今までのキコリへの態度を考えれば、不自然というほどでもない。

 しばらくその姿を見送ると、キコリは武具店の中を除く。

 そうすると、そこは確かに色々と奪われた後で……鎧が飾ってあったと思われる飾り台や、剣を置いてあったと思われる壁掛けなど……そういったものしか残ってはいない。


「……気のせいか?」

「……」


 キコリの呟きに、オルフェは答えない。

 獣人の冒険者たちが去っていった方向を見つめたまま、一向に視線を外す気配もなく……店の中に入っても来ない。


「オルフェ?」

「あのさ、キコリ」

「ん?」

「ちょっとこっち来て」

「?」


 疑問符を浮かべながらも、手招きするオルフェに従ってキコリは武具店の外に出る。

 そのまま、建物から少し離れると……オルフェは手の平を空へと掲げ、炎の槍をその手の中に生み出す。

 それは回転しながら収縮し、細くなり……最終的にジャベリンの如く細い槍のような形になる。


「スパイラル……ッフレアアアアアアアア!」


 ゴウッと音を立てて投擲された炎の槍は回転しながら急速拡大し、武具店に衝突する。

 ズドンッと。とんでもない音と共に余波の熱風がキコリ達を襲い……武具店の在った場所には、その残骸が残るのみとなってしまう。


「お、おいオルフェ。こんなことしたら」

「だってさー。胡散臭さに胡散臭さが重なって、めんどいんだもん」

「めんどいって」

「もうこの町ぶっ壊さない? 凄いスッキリすると思うんだけど」

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