それから、数日

 それから、数日。

 一応の警戒の意味も含めて「生きている町」には近づかず、キコリとオルフェはソイルゴーレムを狩っていたが……再びあの鎧の剣士が攻めてくることはなかった。

 アレ一体が特別だったのか、襲ってくるのを諦めたのかは分からない。

 だが、少なくとも「襲ってこない」ことだけは確かだった。


「……どう思う?」

「どうもこうも。襲ってこない。それだけでしょ」

「その意図だよ。あの1体が特別だったのか、それとも『もっと特別な何か』が出来つつあるのか」

「そこまで濃厚な殺意を持つ意味が不明でしょ」

「そうなんだよなあ……」


 あの鎧の剣士はキコリに確かな……それも濃厚な殺意を持っていた。

 だが、鎧の中身は空っぽであった。

 キコリはリビングアーマーなどに怨みをかった覚えは微塵もない。

 だからこそ、あの襲撃は意味不明なのだ。

 あのリビングアーマー……鎧の騎士はどういう意図で、何故そこまでキコリを殺したがったのか?

 そもそも、あの鎧の騎士は何なのか?

 謎は、何1つとして解けてはいないのだ。


「やっぱり『生きている町』を探索する必要があるな……」

「結局そうなるわよね」

「ああ。ロックゴーレムの襲撃も相変わらず発生中。ただ、アレは……」


 そう、鎧の騎士の「足跡」の件は報告した。

 そしてロックゴーレム襲撃時に調査が行われたのだが、足跡らしきものは何処にも残っていなかったのだ。

 あの鎧の騎士の透明化の理屈とは違うのか。それとも、もっと高度な何かなのか。

 分からない。まだ、何も分かっていないのだ。


「何も進展がない。まさかこんな結果になるとは思ってなかった」


 キコリの背後にソイルゴーレムが現れて。

 オルフェのファイアアローが大穴を幾つも開ける。

 そこに振り返ったキコリが斧を叩き付け足を狩ると、毎度のように掘り起こして魔石を取り出してしまう。

 その魔石をオルフェがキャッチすると、ふうとため息をつく。


「そりゃこっちの台詞よ。ようやくこの気分悪い町を離れられると思ったのに」

「それなんだけどさ」

「何よ」

「なんか、視線に変化がある気がするんだよな」

「変化って?」

「微妙に好意的っていうか」


 それを聞いて、オルフェは胡散臭い詐欺師を見ているような顔をキコリに向ける。


「な、なんだよ」

「大丈夫? 大神とかいうオッサンに会ってリフレッシュしすぎた?」

「怖いもん無しだよなオルフェ……大神だぞ……?」

「会ったこともない神が何だってのよ」


 まあ、そんなところがオルフェらしさではあるだろうか、とキコリは思う。

 そういうところにキコリは救われているのだ。


「そもそも父性だの母性だのが何よ。キコリはあたしにそういうの感じるべきなんじゃないの?」

「オルフェは……」

「何よ」

「相棒だからさ。そういうのは感じないかな」

「絶妙に怒り辛いわね……」

「いや、喜んでくれよ」

「なんかやだ」

「ええ……」


 そんな事を言いながら、キコリとオルフェは「生きている」町へ向かっていく。

 

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