何か分かればよいのですが

 残った鎧の部品や兜などをキコリ達が神殿に持ち込むと、とんでもない速さでジオフェルドがやってくる。


「倒した!? もうですか⁉」

「はい。俺を狙ってたようなのでまあ、あっさり誘いにのってきました」

「なんと……それで、これが犯人の装備……」


 ジオフェルドは兜を見て、それからキコリを見る。


「鎧や武器もそうですが、中身はどうされました?」

「中身が空だったんですよ。その過程で剣と鎧は壊しました。あ、盾もですね」

「空……では共通語を使うリビングメイルだった、ということですか」

「そういうことになる……んですかね」


 キコリがそう答えると、ジオフェルドは安堵したように長い息を吐く。


「そうですか……こう言ってはなんですが、よかった。また獣人の犯行であれば、それこそどうしたものかと思っておりましたが」

「ははっ、蜥蜴獣人の人達については俺は信用してますよ」

「そうですか。有難い話です」


 キコリの台詞にジオフェルドは更に何かを言いかけたが、やめる。

 代わりに兜に触れると「ふむ」と頷く。


「良い兜ですね。どんな効果を持っているかまでは詳しく鑑定しないと分かりませんが……」

「そうですね。厄介な相手でした」


 あの剣も……まあ壊してしまったが、キコリの斧を簡単に切り裂いたくらいだ。相当の価値を持つものであったのは何となく理解できる。

 だからこそ、壊してしまって正解だとも思えるのだが……。


「しかし、そうなると更に厄介な問題が残りますな」

「はい。相手はリビングメイル。なら、そんなものが何故俺を狙ったのか……」

「……これでは終わらないかもしれません。キコリ様、更なる警戒を」

「勿論です」


 生きている町のリビングアイテムがキコリを執拗に狙ってきた件も未解決のままだ。

 もし「生きている町」自体がキコリを狙っていたとして、倒しても新しいものが生成されるであろう状況を考えると……鎧の剣士が再度復活して襲ってきても、何の不思議もない。

 最悪の可能性で言えば、アレが複数体で襲ってくる可能性だってあるのだ。

 まあ、そんな事が出来るのなら最初からそうしていただろうとも考えられるが、最悪の可能は常に想定しておいた方がいい。


「ひとまずですが、こちらの戦利品は預かっても構いませんか?」

「はい。俺が持っていても使いませんので」

「ありがとうございます。先日お話した自己隠ぺいの件がコレから何か分かればよいのですが」


 確かに、それが分かればこの町でのキコリの仕事は半分終わったも同然だ。

 出来れば何か分かってほしい。

 それは、キコリの偽らざる気持ちだった。

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