手立ては絶対にあるはずよ

 考えても答えは出てこない。

 答えに繋がる鍵としては、あの「鎧の剣士」だが……あんな、あらゆる攻撃から中の人間を守る鎧など、本当に存在するのだろうか?

 確かに受け答えこそしていたが、やはりキコリとしては疑問だった。

 それに、問題はまだある。

 アレの正体が何であったとしても、それがどうしてキコリを狙ったのかということだ。

 仮に此処に「キコリがドラゴンだから」を答えとして当てはめたとする。

 ならば、キコリがドラゴンだとどうしてあの鎧の剣士はキコリを狙うのか?


(……分からない。仮定を重ねれば重ねる程、別の疑問が出てくる)


 どうにかしてあの鎧の剣士を捕まえれば謎は解けるのだろうが、ミョルニルをかけた斧に耐え、凍らせても脱出するとなると……それこそ、生かして捕まえる自信は全くない。

 それこそ、全力で殺しに行く必要があるだろうが……。


「……な、なんだよオルフェ」


 そこまで考えて、キコリはオルフェが自分の眼前にいることに気付く。


「……」


 オルフェは答えずにキコリの顔をじっと覗き込むと、待機していた竜神官たちにパタパタと手を振る。


「ちょっと外出ててくれる? で、しばらく此処に誰も入れないで」

「かしこまりました。終わりましたら、机の上のベルを鳴らしてください」

「はいはい」


 迅速に出ていく竜神官を見て、キコリはオルフェに視線を戻す。

 するとオルフェは……キコリを至近距離から、明らかにそうと分かる程に睨んでいた。


「キコリ」

「あ、ああ」

「今何考えてたか言ってみてくれる?」

「へ?」

「言わないなら当てるわよ。グレートワイバーンの時のアレ使おうとか思ってたでしょ」


 言われて、キコリは思わず視線を逸らすが……その逸らした方向にオルフェが回り込む。


「あのさ……いい加減にしないと、あたしが殺すわよ?」

「うおっ」


 本気の目にキコリは思わず顔を引くが、オルフェは容赦なく距離を詰めてくる。

 そして、キコリの眉間をビスッとオルフェの指が突く。


「ギリギリで生きてんじゃないわよ。アンタ、あたしが一緒にいるようになってから2度死にかけてんのよ? しかもあたしがいなきゃ死んでたからね? 分かってんの?」

「わ、分かってるさ」

「ほおー?」


 オルフェは全く信用していない口調で腕組みする。


「じゃあ前回何で死にかけたか言ってみなさいよ」

「ド、ドラゴンブレス……」

「で、さっき何使おうと考えたの?」

「……」

「言いなさいよコラ。オラ、言えよバカ」

「いてててて」


 髪を引っ張られるキコリだが、こればかりは言い返せないので仕方がない。

 しかしまあ、キコリなりに勝算はあったのだ。


「ほら、あれだよ。今回は適応してるはずだから平気かなって」

「はず、で命かけるんじゃないわよアホ」


 だがオルフェには通用しなかった。

 しばらくキコリはオルフェに引っ張られたり叩かれたりしていたが……それが止んだタイミングで、キコリはオルフェに言わなければならない事を言う。


「心配かけてごめん、オルフェ。君に甘えてるのは分かってる。でも……あいつは、無茶しないと倒せないって思ったんだ」

「……本当にそうかしらね?」

「え?」

「確かにアイツは異常に性能の高い武器や防具を持ってたけど……破る手立ては絶対にあるはずよ。無茶以外で、ね」

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