知らない天井
キコリが目を覚ました時、見えたのは知らない天井だった。
蜥蜴獣人の神官達が覗いているのを見て「うおっ」と声をあげてしまったのは……まあ、無理もないだろうか。
「おお、目を覚まされましたね!」
「いやあ良かった!」
「とにかく報告をしなければ。行ってまいります!」
1人の神官が何処かへ走っていくが……キコリは起き上がろうとして、クラッとしてしまう。
「ああ、まだ無理をせず。もう2日も眠っていたのです」
「えーと……此処は何処ですか?」
「イルヘイルの神殿です。施療院は信用出来ないということで、此処に」
そういう事を言うのはオルフェだろうな、と考えて。
キコリは気合でガバッと起き上がる。
「そうだ、オルフェ!」
「いるわよ」
キコリのベッドの横に置かれたフルーツの籠。その上にオルフェが乗っている。
まあ当然だろうが……非常に不機嫌そうな表情だ。
「……またオルフェに助けられたな」
「そうね。一生感謝なさい」
「するよ」
「フン」
オルフェが黙り込んでしまったので、キコリは説明を求めるように蜥蜴獣人の神官に視線を向ける。
「俺が倒れた後、どうなったんですか?」
「オルフェ様の回復魔法が命を繋ぎとめた後、私達も回復魔法をかけ神殿へと運びました。それと、貴方達を襲った犯人ですが……」
「どんな奴、だったんですか?」
「分かりません」
「え?」
「逃げられたそうよ」
オルフェが不機嫌そうに言うが……なるほど、不機嫌の理由はそれもあるのだろうとキコリは理解する。
しかし、オルフェが魔法でトドメを刺したのだろうと思っていたが……とキコリは首を傾げてしまう。
「オルフェ様の魔法で氷漬けになっていたはずなのですが、運搬しようとした時に氷を内部から割り、周囲の冒険者を皆殺しにして何処かへ逃亡したそうです」
「氷漬け……で、生きてた」
「そう判断するしかありません。相当高レベルのマジックアイテムで全身を固めていると考えるべきでしょう」
あの剣士自身は意思疎通が出来ていた。
つまり誰かが中に入っていると思うのだが……あれだけの炎と電撃を受け、氷漬けにされていても生きていられるものだろうか?
それに、あの剣。あれも……。
「1つ伺いたいことがあるんですが」
「はい、なんでしょう」
「生きている町のリビングアイテムって、会話が出来たりします?」
「そのような事例は聞いた事がございませんが……なるほど。そういった事例が過去になかったか調べてみましょう」
「お願いします」
あくまで可能性に過ぎない。
過ぎないが……「そういう可能性」もあるのではないか。
だが、どれだけ考えても……そこまで「生きている町」に嫌われる覚えがない。
(やっぱり可能性としては俺がドラゴンってことくらいだ。だとすると、あの場所は何なんだ……?)
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