無策じゃキツそうだ

 そうして町中を歩いていると、次から次へとリビングアイテムが襲ってくるが……そこで再度、キコリは首を傾げてしまう。


「いや、だとしても何かおかしくないか?」

「何が?」

「こんなにバシバシ襲ってくる場所なのか、此処?」


 もうすっかり慣れた動きで「生きている鍋」を斧で叩き潰しながら、キコリはそう愚痴る。

 そう、先程からリビングアイテムがひっきりなしに襲ってくるが……ちょっと殺意が高過ぎではないだろうか?

 こんな場所で長時間狩りをしていられるなら、獣人の冒険者はキコリが思う以上に腕が良いのかもしれない。

 そんな事を思うのだが……十字路で、他の獣人パーティがキコリの前を通り過ぎ……チッと舌打ちしていく。

 随分とリラックスして歩いているように見える。少なくとも、四方八方からリビングアイテムが襲ってくる状況への態度ではない。


「……?」


 キコリは疑問符を浮かべ、オルフェと顔を見合わせる。


「凄いリラックスしてないか? あれ」

「あたしにもそう見えたけど」

「どういうことだ……? 安全なルートとか、そういうのがあるのか?」


 キコリは獣人パーティが来た道へ入り、歩いてみるが……その瞬間「生きている包丁」が飛んでくる。


「ロックアロー」


 オルフェの魔法が「生きている包丁」を打ち砕くが、別の方向から「生きているホウキ」が飛んでくる。

 それをキコリは斧で叩き割って。回収した魔石を見つめながら、小さく溜息をつく。


「なあ、オルフェ。これってまさか」

「そうね、あたしもそう思う」

「俺が狙い撃ちされてるな?」

「そうね。考えてみればあたしに向かっては飛んできてないし」

「なんでだ……?」


 考え得る理由としてはキコリの種族くらいのものだが、わざわざドラゴンを狙い撃ちにする理由などあるのだろうか?


「分かんないけど、アンタ限定で難易度が上がってるってことになるわね」

「そうなるな。はー……どうするかな」


 別にこの程度の敵であれば今のキコリには何の問題もないが、武器屋などの強力なリビングアイテムが出る場所に近づいたらどうなるか分からない。

 流石に「生きている剣」が何十本も襲ってきたら串刺しにされてしまう。

 とはいえ、この状況では探索も難しいが……。

 飛んでくる包丁を叩き落とし、キコリは方針を決める。


「1度戻って作戦を立て直そうと思うんだけど、どうだ?」

「別にいいけど。ここ避けたらあと残ってるのって砂漠と海じゃないの?」

「いや、まあ。ていうか別に此処の探索やめるってわけじゃないから」

「まあ、そうね。此処が一番確率高いのは変わらないんだし」

「そういうこと。とりあえず、俺に関しては無策じゃキツそうだ」


 それに関してはオルフェも同意していた。

 なんだか分からないが、キコリへの殺意が妙に高い。

 その理由が分からないうちは……確かに、無闇に進むべきではないように感じられたのだ。

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