問題は根深い、か

 その戦果がどれ程のものであるかは、冒険者ギルドの職員の呆然とした顔からでもよく分かる。

 カウンターに載せられた山のような魔石がキラキラと輝く姿は、かなりの迫力がある。


「こ、これは……」

「大体はソイルゴーレムの魔石です」

「さ、3人でこれほどの」

「いえ。私は参加しておりませんので。キコリ様とオルフェ様の2人ですな」


 キコリの背後から顔を出したジオフェルドがそう付け加える。

 そう、ジオフェルドは今回一切手を出していない。

 故にこれはキコリとオルフェだけで出した戦果なのだ。


「ソイルゴーレムを1人で、しかも初見でアッサリ撃破するような2人に私が手助けすることなどありませんからな。ハッハッハ!」

「そ、そんな。ソイルゴーレムを……?」

「元々銀級だったのが、貴方達が原則論とやらで冤罪によるミスを認めなかったのでしょう?」

「し、しかし! それは衛兵隊の」

「彼等は首になって償いましたが?」


 ジオフェルドが首を切る真似をすると、職員は顔を青くして黙り込む。

 そう、衛兵隊が物理的に首になった話はすでにイルヘイル中に広がっている。

 残された僅かな衛兵はこれ以上ないくらい真面目に勤め上げているようだが……これ以上何かあれば自分達も「首」になるかもしれないのだから、必死で当然だろう。

 そして防衛伯がどれだけ本気かは冒険者ギルド側も理解しているのだろう。

 事が国際問題ともなれば……獣王とて、現地採用の職員の処断の許可は躊躇わないだろうから。

 だからこそ、彼等は一端建前にした「規則通り」を愚直に続けるしかない。


「で、では報酬額は少しお時間かかりますが計算いたします。ランクの再計算も必要と思われますので、その。明日また来ていただければと」

「分かりました」


 頷くキコリに職員は露骨にホッとしているが……オルフェとジオフェルドに睨まれてヒッと声をあげる。

 身を翻した先で職員が椅子から転がり落ちる音が響き、助け起こすような音や声、そして責めるような視線がキコリに突き刺さる。

 正直、キコリとしてはそんな視線を向けられるのは理解できないのだが……。


「問題は根深い、か」

「命かかっててもやるもんなのねえ」

「そういうものです。まあ、あの調子では睨むくらいが精いっぱいでしょうが」

「あたしはそれで充分殺したいんだけど?」

「それはご容赦を。殺す時は防衛伯閣下が殺しますので」


 笑うジオフェルトにオルフェが舌打ちして、周囲が脅えるが……そのくらいなら安いモノだろう。

 キコリは自分でも意外なほどにドライにそう思えて……しかし、そのこと自体にも何の感想も抱かなかった。

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