今の俺だと難しい
何体かのソイルゴーレムを倒しながら、キコリたちは進んでいく。
……といっても戦うのはキコリとオルフェで、ジオフェルドは後ろからついてきているだけなのだが。
そうして進み、転移門を潜った先。そこに広がっていたのは……砂浜と、海だった。
「な、なんだコレ……!?」
「海です。何処の海かは分かりませんが……」
そう、キコリ達の立つ砂浜に寄せては返す波。
水平線が見える大きな海がこの区画であるらしいが……。
「え? ということは、この海を渡らないと『先』には行けないってことですか?」
「そうなります。ただ……問題がございまして」
まあ、キコリにも想像はつく。
当然この海にもモンスターはいるだろうから、泳いでいくわけにもいかない。
ならば船を持ち込まなければならないが、此処には小舟の1つも置いてはいない。
ということは……小舟程度では渡れない何かが潜んでいるのだろう。
「強力なモンスターがいるんですね? 小舟程度なら沈めるような」
「居るか居ないかで言えば、居ます。小舟で渡ろうとした冒険者は全員水中から何かに襲われて沈みました」
「ならでっかい船作ればー?」
「計画はあります。まだ実現していませんが」
オルフェの皮肉にジオフェルドは真面目に返して。
「幾つもの小舟で船団を作り、精鋭を載せて複数ルートで『先』に向かうという計画を実行した冒険者集団もいました」
「そう仰るということは……」
「はい。未だに帰ってきていません。沈んだか、その「先」が更なる難所であったか。ですが今となっては、此処に近寄る冒険者は居ません」
そう言うと、ジオフェルドは身を翻す。
「別の転移門へ参りましょう。此処は危険だということだけ覚えてくだされば大丈夫です」
そう言って、ジオフェルドは転移門を潜って戻っていって……キコリはオルフェに視線を向ける。
「オルフェ。この先、何があると思う?」
「知らないわよ。でも此処に潜んでるのはクラーケンでしょうね」
「クラーケン……」
「仲間から聞いたことあるわ。でっかくて足が一杯あってキモいやつよ」
キコリは前世のイカとかタコを思い出す。
それのデカいのが襲ってきたなら、なるほど……確かに脅威だろう。
「……海底なら『適応』すればいけそうな気もするんだよな」
「やめときなさいよ。水棲生物と水中で戦うとか……ていうかあたしが一緒に行けないでしょうが。むしろ飛びなさいよ」
「出来たらいいんだけどなあ……今の俺だと難しいって気がする」
「本気で考えてんじゃないわよ馬鹿」
「いてっ!」
鼻を叩かれたキコリがそんな声をあげるが、まあ確かに此処を無理矢理突破しても何1つとして良い事はない。
なにしろ、どう突破したか説明できない。
だからこそキコリも進むのをスッパリ諦めると、転移門を潜って戻っていく。
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