ソイルゴーレム

 英雄門を抜けると、先程のゴーレムの残骸を運んで砕き、形を整えている姿が見られた。


「あれって建材にしてるんですか?」

「その通りです。何しろゴーレムは土に還りませんから。魔石を取り出した後はああやって砕いて石材に加工します。人気の建材らしく、ささやかですが町の収入になります」

「上手くやってんじゃない。このままでいいんじゃないの?」

「こんなものを日常にしてはいけないのですよ。壁ギリギリで守ることが日常になっては、いつか取り返しのつかない事態を招きます」

「確かに……そうですね」


 ゴーレムが防衛都市の近くに出るのは普通の事。

 それが「日常」になったら……いつか通常よりも強いゴーレムが突然現れたら、壁を突破されてしまうかもしれない。

 だからこそゴーレムの発生源を潰す必要がある。今が異常事態なのだと、認識する必要があるのだろう。


「分かる気がします」


 頷くキコリに、ジオフェルドも頷き返して。

 そうして3人は荒野を歩くが……半日もかからない場所に「転移門」があるのを見て、キコリは「え、もう?」と声をあげてしまう。

 ニールゲンの「転移門」と比べると、随分と近い場所にあることに驚いたのだ。


「イルヘイルから空間の歪み……いえ「転移門」までの距離は、他の防衛都市と比べると短いです。故に、今回のダンジョン化はイルヘイルに非常に大きな影響をもたらしました」


 今まで制御できていた状況が、突如白紙に戻ったようなものだ。

 そして……転移門を潜ると、そこでは激戦の最中だった。


「いけ、囲めー!」

「油断するな! 連中、すぐにリポップするぞ!」


 荒野でもなく草原でもなく、一面に黒い土が広がる大地。

 そのあちこちで土の身体を持つゴーレムが盛り上がるように現れては、冒険者たちに襲い掛かっている。


「こ、此処にもゴーレム?」

「ソイルゴーレムです。汚染地域の豊富な魔力が生み出すゴーレムですが、倒し方さえ分かっていれば然程の強敵ではありません。つい先日、常設依頼にもなりましたしね」


 どうやら此処のゴーレムについては問題ではないらしく、ジオフェルドも淡々と語るだけだ。


「ですがロックゴーレムは違います。連中を『何』が作って何処からバラまいているのかは不明のまま。キコリ様には、その謎をぜひとも解いていただければと考えております」

「それって……人災って意味ですか?」

「分かりません。何かしらの強力なモンスターによるものという可能性も濃厚ですから」


 ……だとすると、どうであれ難しい仕事になりそうだと。

 キコリは、そう直感していた。

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