必要ありません
「これ、は……」
「へー」
「これがイルヘイルの現状です」
絶句するキコリと面白がるオルフェ、そしてジオフェルドの目の前。
英雄門のすぐ先にあったその光景は、巨大な岩人形が暴れ回る姿だった。
「ゴーレム……岩の身体を持つモンスターですが、本来であればこんな場所に出るモンスターではありませんでした」
「ダンジョン化の影響ってわけね」
「そういうことでしょう」
暴れ回るゴーレムの巨体に獣人の冒険者たちが群がっては吹っ飛ばされ、放たれる魔法がゴーレムを削っていく。
よく見れば周囲にはゴーレムの残骸らしきものも転がっていて、ツルハシが地面に刺さっているのも見える。
「と、とにかく加勢しなきゃ……!」
「必要ありません」
斧を構えたキコリに、ジオフェルドがそう言って首を横に振る。
「あそこに加勢しても、貴方が疎まれるだけです」
「え? でも……あっ」
キコリの視線の先。そこでは、なんとかゴーレムを打ち倒す冒険者達の姿があった。
上がる歓声と、ツルハシでゴーレムを解体していく姿。
どうやらかなり細かくするようで、ガッツンガッツンとツルハシの音が響き、怪我人を神官がヒールで回復して回る。それは、これ以上ないくらいに慣れた動きだった。
「たまに強力な個体が出た時には防衛伯閣下が出ますが、そうでなければあの通り。新人から中堅くらいの冒険者が集団であの仕事に当たるわけですね」
「なるほど……」
「ですが、本来であれば防衛伯閣下が出る事態になることが言語道断。なんとか発生源を突き止めたいのですが、未だ有用な報告はありません」
確かにすぐ分かる場所に発生源があるなら、防衛伯やこの防衛都市の精鋭が向かうだろう。
そうでないということは分かりにくい場所か、遠くからゴーレムがやってきているということになる。
「キコリ様。貴方は防衛都市ニールゲンでは期待の新人である……と紹介状にはあったそうです。私達は、その力でこの状況を変える事を望んでいます」
「ゴーレムの発生源を突き止めろ……ってことですよね」
「そういうことです。その依頼をメインに、様々な依頼をもって貴方のサポートとする予定になっております」
それも美味しい依頼ということなのだろう。
キコリが頷くと、ジオフェルドもニコリと微笑んで身を翻す。
「では冒険者ギルドへ向かいましょう。この都市で冒険者をやるのであれば、何度も向かう場所ですから」
「はい、ジオフェルドさん」
「どうせロクでもないのばっかりって気もするわ」
オルフェの愚痴に近い呟きにジオフェルドが苦笑しながら「職務に真面目な方々ではあるのですがね」とフォローしていた。
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