イルヘイルの現状
翌日。キコリとオルフェ、そしてジオフェルドの3人は防衛伯の家の前で集合したのだが……そこにやってきたジオフェルドは、かなりの重武装だった。
全身を覆う鎧に兜、大盾に……武器は大金棒、だろうか? かなり凶悪な形をしている。
「な、なんか凄いですね……」
「いえいえ。キコリ様の鎧の方が素晴らしいかと。デザインも良い。先日は伺いませんでしたが、キコリ様は竜神信仰を?」
「えーとまあ、俺は信仰というほど教義とかを知らないので」
「そんなのは関係ありません。必要なのは前に進む努力と祈りの心です」
「努力が先なんだ」
「祈ってドラゴンに近づけるなら誰もが倒れるまで祈るでしょうな」
オルフェのツッコミにサラリと答えるジオフェルドだが、なんとも納得できる答えだった。
まあ事実キコリは竜神に祈っていなかったから、正解なのだろうが。
「では向かいましょう。その途中で私の使える魔法についてもお話ししましょう」
そうして歩いていくと、キコリとジオフェルド、オルフェの3人に視線が向けられるが……誰も絡んでこないし、話しかけてもこない。
昨日と比べると雲泥の差だが、それはそれで不安になる光景だ……が、ジオフェルドは気にしてもいない。
「ヒール(回復)、ストレングス(筋力強化)、リカバリー(状態回復)、ホーリー、それと……魔法ではありませんがドラゴンロアですな」
「え、ドラゴンロア?」
あまりにも聞き覚えのあり過ぎる単語に、キコリは思わず反応してしまう。
ドラゴンロア。それはドラゴン特有の技であり、魔力を混ぜた咆哮で相手を威圧する技……なのだが。
「はい。竜神官であれば必ず覚えます。ドラゴンのものには遠く及びませんが、人類が模倣するには適した技です」
「そ、そうなんですね……」
確かにドラゴンロアはウォークライに魔力を混ぜれば「そう」なる。
もっとも、それだけではなく「ドラゴンが放つから」こそ本来の威力を発揮するのだが……ジオフェルドが言う通り、模倣には適しているのだろう。
「勿論、過信できるものではありません。自己暗示のような面もありますしね」
「はは……それは分かります」
ウォークライの発展形といえる技だが、だからこそ過信は禁物だというのもよく分かる。
実力でも魔力でも勝る相手は、ドラゴンロアも容易く跳ねのけるだろう。
「さて、ところでキコリ様。見えますか?」
「……ええ」
昨日は気付かなかったが……今日はハッキリと分かる。
英雄門の、その少し先。
激しい戦闘音が聞こえてくるのが分かる。
時折魔法のような爆発音と、地響きや悲鳴すらも。
迷宮化の影響が他の防衛都市よりも大きく、冒険者の損耗も大きい。
セイムズ防衛伯から聞いていたイルヘイルの現状が……今、キコリのすぐ近くにあった。
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