敬意を払うのは当然です
夕食もキコリとオルフェはギザラム防衛伯に呼ばれ一緒にとることになったが……食堂にはギザラム防衛伯の他に、知らない蜥蜴人がいた。
黒い神官服と、恐らくはドラゴンを模したと思われるペンダント。
扉の近くに立っていたその男はキコリとオルフェを順に見ると、深々と頭を下げる。
「お初にお目にかかります。竜神を信仰せし竜神官が1人、ジオフェルドでございます」
「ご、ご丁寧にありがとうございます。俺はキコリ、こっちはオルフェです」
「キコリ様に、オルフェ様ですね。どうぞ私の事は気軽にジオフェルド、あるいはジオとお呼びください」
「ありがとうございます……」
「なんでそんなに腰低いの?」
「こ、こらオルフェ!」
全く遠慮せずにオルフェがズバッと言ってしまうが、それにジオフェルドは笑って答える。
「ギザラム防衛伯閣下のお客様にして、隣国の防衛伯閣下から派遣された方でもあるのでしょう? 敬意を払うのは当然です」
「そこのオッサン以外は馬鹿としか会ってないんだけどー?」
「嘆かわしいことです」
ジオフェルドは本当に悲しそうに首を振るが……なんというか、本当にマトモそうな人だとキコリも思ってしまう。
他の獣人とこれほどまでに違うのは、蜥蜴人の種族的な特性か何かなのだろうか?
「さあ、挨拶も済んだろう。料理が冷める前に頂くとしようじゃないか」
そんなギザラム防衛伯の言葉で全員が席について食事を始めるが……キコリには「美味しい」しか分からない。
オルフェのサイズに切られた料理もあり、気に入ったのか黙々と食べていたが……キコリの分のデザートはすでにオルフェの皿に移し替えられている。
代わりなのか、肉や魚系の料理はキコリの皿に載せられていたが。
「キコリ。君は明日冒険者ギルドに行き、儂からの依頼を受ける事になるだろう」
「はい」
「そのまま冒険に行くと思うが……その際、ジオフェルドも連れて行きたまえ」
「えっ」
「君に渡したペンダントを使うまでもなく、ちょっとしたトラブル程度であれば彼が解決してくれる」
ギザラム防衛伯の言葉に、ジオフェルドも「お任せください」と頭を下げる。
「まあ、ずっと連れて行けとは言わんよ。君自身をジオフェルドが見極め、問題なさそうなら町での生活の為のバックアップ要員となる」
「バックアップ、ですか?」
「うむ。君がこのイルヘイルに滞在する間の家の管理などだな。こう言っては何だが、君が滞在する間に頼りにすべきは蜥蜴人だと言い切れる」
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