友好の懸け橋
友好の懸け橋。
キコリはクーンから人間と獣人の関係が微妙だというような話を聞いていたことを思い出す。
いや、違ったような気もする。月神を信仰していると中々合わない……だっただろうか?
「以前獣人の友人から信仰する神についての問題を聞いたことがありますが、そういう問題であれば俺が信用されるでしょうか?」
「確かにあちらでは月神を信仰する者が多数だ。しかし、それだけではない。あちらでは竜神や大神の信者もいるからな」
「竜神、ですか?」
聞き覚えのあり過ぎる単語にキコリは思わず反応してしまう。
「その通りだ。獣人の中に蜥蜴人と呼ばれる者達がいるのだが……彼等は全員が竜神信者だ」
「何考えてるか丸分かりね」
オルフェがつまらなそうに呟くが、キコリにだって想像できる。
つまり……ドラゴンを崇めているか、ドラゴンのようになりたいか。
そのどちらかなのだろう。
しかし、そこまで考えてふと気付く。
(そういえば……竜神を信仰してるのに、ドラゴンはモンスター扱いなのか……?)
だが、そんなことを聞くのもどうかと思ってキコリは言葉を飲み込んで。
「なんで竜神崇めてるのにドラゴンをモンスター扱いしてんのよ」
「だからオルフェ……!」
「でも聞きたいでしょ?」
「そりゃまあ……あ、いえ」
キコリが誤魔化そうとすると、セイムズ防衛伯は楽しそうに笑う。
「構わんとも、確かに矛盾だ。だがね、多くの人間はそう考えていない」
「どういうことですか?」
「つまり、ドラゴンは竜神の人間への試練だと考えている……ということだ」
この壁を超えよ、というわけだな……とセイムズ防衛伯は語る。
たとえばドラゴンの牙、鱗……恐らく超高品質であろう魔石もそうだ。
それらを手に入れることが出来れば、それこそ人類最強も夢物語ではない。
ドラゴンの力を手に入れる。それは最強を夢見る者たちの夢であり続けているということだ。
それこそ簡単にドラゴンの力を手に入れる方法があれば、誰もが飛びつくだろう。
「な、なるほど」
「その理屈だとゴブリンの牙でゴブリンの力が手に入るのかしら」
オルフェがズレた感想を言っているが、つまるところ……キコリがドラゴンだとバレないようにしないと、同じ人間……いや、今はキコリはドラゴンだから違うが、ともかく人間に狙われるだろうということだ。
「まあ、紹介状も渡すし君に与えたペンダントもあるだろう。邪険には扱われんよ」
「そ、そうですよね」
「そう上手くいくといいけど」
「いくとも。あちらだって外交問題にしている余裕などないからな」
ではよろしく頼む、とセイムズ防衛伯に言われてしまえば、断れるはずもなく。
キコリはアリアにどう説明しようか、頭を悩ませていた。
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