それが罠になる

 6体、7体、8体。

 9体、10体、11体。

 キコリとオルフェはワイバーンを待ち構え、倒し続けていく。

 倒す度に移動して、自分たちの位置を悟らせないようにしているが……当然、それにも限界がある。

 この領域に入って3日目。定期的にワイバーンが高空を巡回するように飛んでくるのを見て、オルフェが軽く舌打ちをする。


「……完全に警戒されたわね」

「警戒しない方がおかしいさ」


 ワイバーン側も、自分達に敵対する「何か」がいることは充分に分かっている。

 その何かが地上に隠れていることまでも推察できているだろう。

 キコリたちが隠れている場所が焼き払われないのは、そうすることでワイバーンが自分の首を絞める結果につながると、ワイバーン自身が分かっているからなのだろう。


「で、どうするのよ」

「そりゃまあ……手は2つだな」


 1つ目は、このままワイバーンの警戒が緩むのを待つ。

 食事も水も用意している以上、慌てて強硬手段に出る必要はない。

 ワイバーンの警戒が緩んだところを狙って再度の襲撃を行うのは妥当な戦術といえるはずだ。

 

「2つ目は、この状況を利用することだ」

「どういう意味?」

「向こうは警戒してる。でも、籠城してるわけじゃないってことだ」


 ワイバーンが畜産なり農耕なりを行っているならともかく、確認した限りのワイバーンの食生活は狩猟によるものだ。

 ならば当然食事の為に狩りをする必要があり、だからこそ警戒偵察のワイバーンが出てきている。

 しかし……それは完璧なのだろうか?


「それを専門にする人間の警備計画だって、その穴を突かれるんだ。ワイバーンの警備計画に穴がないはずがない」

「ふーん。その穴って? あたしにはよく分かんなかったけど」

「簡単だ。連中は『地上に敵がいる』って前提で動いてる」

「そうね」

「なら、その痕跡を見つければ当然素通りは出来ない。なら……」


 キコリが言おうとしていることの意味を、オルフェも理解してニヤリと笑う。


「なるほどね。それが罠になる。連中がどう反応するにせよ、そこにおびき寄せられる」

「そういうことだ」


 たとえば降りてきて調べようとするなら、キコリが即座に襲い掛かればいい。

 空中で留まり調べようというのであれば、オルフェの魔法を撃てばいい。

 仲間を呼ぼうというのであれば……それを囮に逃げればいい。

 警戒が一部に集中することで、逆に警戒の薄いエリアが出来上がる。

 そうして狩場を変える事で、しばらくは持つだろう。


「で、具体的にどうすんのよ」

「そうだな……とりあえず、木を組んでみようか」

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