行ってきます
そして、翌日。オルフェがキコリの鼻を掴んで寝ていたせいで微妙にキコリの目覚めがよくなかったらしいが、とにかく体調はしっかり整った。
「いってらっしゃいキコリ、オルフェさん」
「行ってきます、アリアさん」
「フン」
オルフェは相変わらずだが、そんなキコリたちにアリアは手を振って。
市場で必要なものを揃えながら、キコリとオルフェは英雄門へと辿り着く。
そこでキコリは衛兵にワイバーンの下へ向かいたいと事情を添えて伝えたのだが……。
「恐らくそうなるだろうと防衛伯からも伺っている」
「防衛伯様が?」
「そうだ。気をつけて行きたまえと、そう伝言をお預かりしている」
キコリが想像していたよりも、ずっと防衛伯はやり手であるらしい。
それを感じながらキコリは「ありがとうございます」と頭を下げる。
これで、もう何も問題はない。
「……これは俺の個人的な意見だが、ワイバーン相手に逃げても恥じゃない。連中は数体いれば小さな町くらいは破壊する。そういう相手だ」
「はい、充分に気をつけます」
「ああ。幸運を」
再度衛兵に頭を下げて、キコリはオルフェと共に目的地へ向かっていく。
何処からかゴブリンは英雄門近くの森に戻ってきているようで、「転移門」などとカッコつけた名前をつけたところで、その広範囲っぷりは以前と何の変化もないことを防衛都市の人々に実感させていた。
キコリ自身、何度かゴブリンに襲われており……その頻度は防衛都市に来た初日を思わせた。
「なんていうか……もしかしてゴブリンって、此処にしか居場所がないのか?」
「可能性はあるわね」
キコリとオルフェはゴブリンの死骸から魔石を抜き取ると、そのままスタスタと奥へ進んでいく。
この調子だと、妖精の新しい集落の周辺にもゴブリンが出ていそうだが……ソレに関してはゴブリンに「ご愁傷様」とお悔やみを申し上げるべきかもしれない。
どちらにせよ、今回の目的はワイバーンだ。ゴブリンを探して狩る必要もない。
歩いて、歩いて。
キコリとオルフェは転移門を潜ってコボルト平原へと辿り着く。
数日前の喧騒も何処へやら……といった風に冒険者の数は減っていた。
だが、襲ってくるコボルトの姿もない。
「チッ、全滅しちまったか?」
「かもしれないなあ。相当やったろ」
そんな会話をしている冒険者の横を通り抜け、オルフェは「うわあ……」と引いたような声をあげる。
「数には数っていうけど。ドン引きだわあ……」
「はは……」
まあ、あれだけの数の冒険者がコボルト平原に殺到すればそうもなるだろう。
コボルト自身、引くことを知らない感じではあった。
「実際どう思う? 全滅したのかな?」
「どうかしらね。地下掘ってみないと分かんないと思うわよ」
アリみたいだな……とキコリは思うが、もしかすると似たようなものなのかもしれない。
そんなことを考えながら、ワイバーンのいる……「元妖精の森」へと続く転移門の前へと辿り着く。
「じゃあ、行こうオルフェ」
「ええ」
キコリは両手に斧を構えて。
オルフェも緊張した様子を見せながら。
そうして、2人は転移門を潜っていく。
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