絶望した顔してるから
人間が汚染地域を作った。
正直、そうじゃないかという予感がキコリにはあった。
空間の歪み。
英雄と呼ばれる転生者たち。
彼等の残した強力な魔法や便利な道具。
禁呪指定という決まり事。
これ等を総合して考えれば、過去に何かとんでもない事態が起こったと想像するのは難しくない。
「……じゃあ、空間の歪みも」
「あたしは見てないけど、そうだって話よ? もうずーっとずっと、遥か昔の話だけどね?」
当時、凄い人間がいたという。
とんでもない魔力を持って、とんでもない魔法を扱う、とんでもない人間。
その人間が色々あって超強力な魔法を使った結果、時空は歪み世界のかなり広い範囲が濃い魔力が暴走するかのように吹き出し続ける場所となった。
それは人間にとってはあまり良い影響をもたらさず、モンスターにとっては住みよい環境となった。
「ってわけ。分かった?」
「じゃあ、全部人間のせいじゃないか」
「そうでもないわよー? そいつがそういう魔法使ったのは人間とモンスターの全面戦争の最中だったって話だし。ま、人間の肩なんか持ちたくないけどね」
「そう、なのか」
「そうよ。なんか絶望した顔してるから教えてあげたけど」
なるほど、それは詳細がぼかされるはずだ。
人間の魔法で汚染地域が出来上がった。まさに不祥事だ。
たとえそれが全面戦争で勝つ為だったとしても、大っぴらに言えないのも理解できる。
当時のことは知らないが、恐らくそうする必要があるような戦況でもあったのだろう。
「もう1つ言ってあげるけど。人間が奥を目指してるのはたぶん、空間の歪みを消す為なんじゃない? そんな感じのこと言ってたらしいし」
「消せるのか?」
「さあ? でも今回の迷宮化といい空間の歪みの維持といい、何かのコアになるものがあってもおかしくないとは思うけど」
それ壊せば消えるんじゃない、と言うオルフェに、しかしキコリは首を傾げてしまう。
「いや、待った。なんでそれを俺に教えるんだ?」
「別に教えても困らないし。空間の歪みが消えたところでね」
「……そうなのか」
「そうよ? ま、他のモンスター連中がどう考えてるかは知らないけど」
「最奥のモンスターとかは」
「知らないってば。あ、でもドラゴンとかは空間の歪みが消えるの嫌がるかもね。分かりやすく縄張りになってるし」
あはは、ザマア……などと笑っているオルフェにキコリは「モンスター社会も複雑なんだな」と考えてしまう。
しかし……此処で聞いた情報は、やはり話せないだろう。
妖精から聞いた、などという話が広がっては、どんな惨状になるか想像もつかない。
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