首都と辺境
「はあ、はあ……とにかく! あたし達は人間嫌いなのよ。仲良くするとか有り得ないから」
「見逃すのもダメなのか」
「なんで我慢しなくちゃいけないのよ。何の得があるの?」
「得かあ……」
「言っとくけどあたし達からすれば人間は害獣よ、害獣。ゴブリンと大差ないわ」
そこまで言うのか、と思いながらもふとキコリは引っかかる。
人間とゴブリンが同程度の扱いとして……ゴブリンも害獣?
同じモンスターなのに?
「……人間側の知識だと妖精もモンスターで、モンスター同士で争ったりは普通はないって聞いたんだが」
「普通はね。それは序列が大体ハッキリしてるからよ。争う意味がないだけ。大体安定してたしね……まあ、それもどうなるか分かんないけど」
「それって、やっぱり」
「迷宮化のせいよ。たぶん察するに、色んなものがバラバラになってるはず。となると、当然仲間と合流しようとか自分が元居るべき場所に戻ろうとか。そういう現象が起こると思うわ」
「でも、『場所』自体は変わらないんだろ?」
「そうね。でも『位置』は違うでしょ?」
そこまで言われれば、キコリは『ある事実』に気付く。
もしかして、だが。
モンスターが「弱い人間を求めて英雄門近くに来る」という発想自体が間違っていたのだろうか?
そう説明されてそういうものだと思っていたが……そもそもモンスターにとって英雄門付近は人間という敵対生物との最前線のはずだ。
なのに、弱いモンスターが分布する?
「首都と辺境……」
「は? なんて?」
「強いモンスターの集う『中央』があって、人間の街近くはモンスターにとっては田舎とか辺境とか、そういうことなのか?」
「あー……大体そんな感じ?」
確かにその方がしっくりと来る。
だが同時に、それはある1つの事実をも示唆していた。
もしかして、モンスターは人間の「討伐」にそれほど積極的ではないのでは?
だとすると……。
「何考えてるか知らないけど、モンスターは人間ぶっ殺したいって常に思ってるわよ」
「え?」
「いつでも殺せるから積極的に殺してないだけ。あと魔力薄い地域奪うメリットもないし」
理解はできる。
だが、それはおかしい。
なら、あの英雄門を襲ってきたゴブリン軍はなんだったというのか?
「でもゴブリンは襲ってきたぞ? ジェネラルに率いられて……」
「そりゃまあ、連中嫌われ者だし。立派な家をゲットしようとでも思ったんじゃないの?」
「此処を汚染地域って呼んでるのは」
「間違ってないんじゃない? バカみたいな魔法使って自分たちが住めない環境作ったのは人間だしー?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます