正直助かる
「え、だとすると中身も全部」
「木の実は食べたよー」
「あの赤い果物干したのも美味しかったねー」
「私はお芋が好きだなー」
「ねー」
「他の荷物は」
「燃やしたよねー」
「人間臭かったよねー」
「ねー」
あまりにもフリーダムすぎる妖精たちに、キコリはクラッとしてしまう。
そうなると、此処からあのコボルト草原を武器も防具も無しで抜けなければならないということだ。
それは流石に……命知らずが過ぎる。
バーサークメイルの補助なしではミョルニルの連発で押し通ることすら出来ない。
「どうすりゃいいんだ……」
「なんか可哀想になってきたねー」
「哀れだよねー」
「ねー」
「だから何か用意してあげればいいじゃん」
オルフェが再度言うと、妖精たちは顔を見合わせる。
「うーん。どうする?」
「別にいいけど、こいつ人間の街で暮らしてるんでしょ?」
「ねー」
どういうことなんだろうか、とキコリは思う。
まさか妖精が槌を振るって武器を造るわけでもないだろうに。
考えていると、オルフェがキコリの頭を叩いてくる。
「キコリ。アンタ、口は堅い方?」
「まあ、堅いけど」
「それって『この人なら大丈夫』とか、そういう例外とかないやつ?」
「……言うなって言われたことは絶対言わないけど。え、まさか」
「さっきからその話しかしてないじゃないバカ。人間が知ると面倒だから聞いてるのよ」
やはりキコリに何か造ってくれるという話のようだ。
勿論キコリは誰かにそれを吹聴するつもりは微塵もない。
ないが……。
「でも、装備が変わってたら何処で手に入れたって聞かれるとは思う。なんで答えたらいいんだ?」
「ミミックの死骸から出てきたって言えばいいじゃん」
「ミミックって人間の世界じゃ『英雄が偶然出会ったモンスター』レベルのレアなんだが」
ミミック。
中に財宝を生成する、不可思議なモンスターだと言われている。
その理屈は不明だが、死と同時に溜め込んだ魔力が財宝の形になるらしく、過去の英雄の記録では「不滅の耳かき」なるものが出てきて、それは王都の博物館に展示してあるらしい。
まあ、そんな類のモンスターらしい……のだが。
「確かミミックの死骸保管してあったでしょ」
「あるある」
「でもアレ今、イジリデのベッドになってなかった?」
「渡せって言えばいいのよ。元はといえばアイツがキコリに魔法撃ったんだし」
何やらキコリを置いてきぼりにして話が進んでいくが、やがて妖精たちは頷くとキコリの周囲をくるくる回り始める。
「じゃあどんなのにするー?」
「ドラゴンっぽいのにしようよ。間違えないようにさ」
「ねー」
「武器なんだっけ」
「斧だよ斧ー」
「鎧は魔力吸うやつだからね。間違えんじゃないわよ」
頭の上で指示を出しているオルフェ……は見えないが、キコリはオルフェにお礼を言う。
「ありがとう、オルフェ。正直助かる」
「フン、ちゃんと恩は返してもらうからね」
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