臭いから
「それでさー、結局アンタって何なの?」
1人の妖精が、キコリにそう問いかけてくる。
大丈夫、答えは決まっている。
「ドラゴニアンのキコリだ」
「ドラゴニアン?」
「知ってる?」
「しらなーい」
「ま、いいか」
妖精たちは追及するほど興味がないのか、人間じゃなければいいやという方向性なのか。
その辺りについては分からないが、とりあえず追及は躱したようだった。
「それでキコリはこんなところで何してたの?」
「迷宮化の原因を探りに来たんだ」
「ほら、なんか色々変わったじゃん。アレを人間の街ではそう呼んでるんだってさ」
オルフェのフォローに妖精たちが「へー」と声をあげる。
「で、こいつザコだから人間の街に住んでるんだってさ」
「あー、それで人間くさい装備つけてたんだー」
「ねー」
言われて、キコリはさっきのオルフェの家に自分の斧や鎧がなかったことを思い出す。
「もしかして俺の装備」
「臭いから溶かしちゃった」
「ねー」
「え、鎧も?」
「うん」
「苦労したよねー」
一応アレは魔力を吸収する鎧なのだが、それでも魔法で溶かし切ったというのだろうか。
恐ろしい妖精の実力にゾッとすると共に、なんとも言えない気持ちになってしまう。
「アレがないと俺、戦えないんだけど」
「えー、かわいそー」
「ザコくてかわいそー」
「でもしょうがないよねー、ドラゴンっぽいのに爪も牙もないし」
「魔力もショボいしねー」
「ねー」
散々な言われようだが、頭の上のオルフェが話を纏めるようにパンパンと手を打つ。
「はいはーい、そこまで。なんか代わりのものないの? 人間とかゴブリンが落としてったのとか」
「そんなの拾わないよねー」
「そもそも人間なんて大分長い間見てないよねー」
「えー、どのくらいだっけ」
「2年くらいじゃない?」
「ねー」
オルフェが上手く話題を誘導してくれているとキコリは気付く。
2年ほど人間と遭遇していない。
つまり、先遣隊は妖精と遭遇しておらず、別の場所にいる可能性が高い。
それだけでも大きな情報だろう。
「じゃあさー、あたし達で何か用意してあげればいいんじゃないの?」
「えー?」
「なんでー?」
「ねー」
オルフェが頭の上で言っている言葉にキコリは「えっ」と声をあげる。
「いや、いいよ。一端帰ればいいんだし」
「どうやって?」
「帰れる力を持った道具があるんだ」
そう言えば、オルフェがキコリの頭の上から顔を出し馬鹿を見る目で見つめてくる。
「な、なんだよ」
「あのさー、今アンタの武器とかが溶けた話してたんだけどー?」
「あ、ああ」
「人間臭いって理由で溶けてんのに、なんで荷物が無事だと思うワケ?」
「……あっ」
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