大きいほうが嬉しいじゃない
……ちなみにだが、先程までかけられていた布は、色んな布を縫い合わせた布団もどきであるようだった。
それも人間サイズのようだが、まさかわざわざ用意したのだろうか?
「あ、それ? うちの絨毯」
「絨毯」
「うん」
「……」
まあ、いいか。そんなことを考えるキコリだが、この家……木の枝を組み合わせたらしい小屋も、どちらかというと人間サイズである気がする。
出入り口も、キコリが充分出入りできる程度には大きい。
「あのさ。この家、オルフェが住むには大きくないか?」
「大きいわよ? でも大きいほうが嬉しいじゃない」
「否定はしないけどな」
「別に認めてもらう謂れはないんですけどー?」
「ごめん。言葉選び間違ったな」
「気にしてないわよバーカ」
「はは……」
口は悪いが話せる。
キコリはそう思うのだが、それは自分が「人間っぽくないから」であることは分かる。
だからこそ、複雑な気分になってしまう。
ドラゴンクラウン。
それがキコリの中になければ、この瞬間はなかったのだから。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
「んー……って、あっ」
「え? うおっ!?」
家の入口を出た瞬間、襲ってきたのは浮遊感。
地面がない。いや、下にある。
落下する?
受け身……どうやるのか分からない。
どうすれば。どうもできない。
「ぐ、ううううううううう!」
どうしようもなくて、せめて骨折は防ごうと足から着地しようとする。
それが正しいかどうかなんて、分からない。
骨にヒビくらいなら入るかもしれない。
なら強化だ。身体を強化して、怪我をしないようにする。
そこまで一瞬のうちに考えて、キコリはミョルニルを発動しようとする。
いや、違う。あれは付与魔法かもしれないが同時に攻撃魔法だ。
此処でそんなものを使うわけにはいかない。
発動させかけた魔法は、途中で霧散して。
ズドン、と。凄まじい音を立ててキコリは地面に着地する。
「……痛……」
「うわー、大丈夫?」
「確かこいつ、オルフェのとこのだよねー?」
「そうそう、なんか人間の形してる人間っぽくないやつ」
ワラワラとやってくる妖精たちに答える余裕もなく、キコリは短く息を吐く。
大丈夫。何故か痛みはない。
これもドラゴンクラウンとやらの力なのだろうか?
「ねーねー」
「無視とかサイテー」
「え、あ、ごめん」
キコリが反射的に謝ると、妖精たちは顔を見合わせる。
「謝ったなら仕方ないねー」
「うんうん」
「許してあげよう」
軽いのか独特のリズムなのかは分からないが、友好的なのかどうなのかすらも分からない。
どう話題を切り出したか悩むキコリの頭に、何かがぽふっと乗っかる。
「いきなり落ちるからビックリしたじゃん。バーカ」
「オルフェ……」
そんなに知らないはずなのに安心するな、と。
キコリはホッと息を吐いていた。
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