作戦を立てよう
無数のオークが、そこにいる。
遠目に見えるだけでも、そんな光景がそこにあった。
オークの集落。此処は、そういうモノなのだ。
そしてこの場所の四方を壁のように囲むのは「空間の歪み」だ。
今キコリたちが来た方向に戻れば元の場所に、残りの三方向は別の何処かへと繋がっているのだろう。
確かにこんなことになっていれば、モンスターが一斉に防衛都市へと向かってこないのも納得がいく。
「そうだよな、住み分けてるんだ。攻めてくる理由がない」
「うん。ゴブリンみたいなのを除けば、統治が完了してるってことだよね」
「つまり、向こうにしてみれば侵略者は私たち……」
それを考えれば、防衛都市は単純にゴブリンに対応するため設計されたということなのだろうか?
だとすると、色々と納得がいってしまう。
ゴブリン程度を防げれば良い強度で防衛都市や壁砦を造っているとしたら。
しかし、それならわざわざ攻め込む理由は?
向こうからの反撃の可能性を作ってまで冒険者を「ゲート」の向こうに攻め込ませる理由は?
いや、そもそも「冒険者」の存在意義は?
「……汚染地域、か」
「え?」
「たぶん深く考えようとするとヤバい話なんだろうなって気がした」
キコリのそんな言葉にクーンもエイルも黙り込んでしまう。
確か前世に「藪をつついて蛇を出す」という言葉があったが、そういう類の話かもしれないのだ。
「クーン、教えてくれ」
「何を?」
「俺たちが此処から先でするべきことだよ」
正面から攻め込むのはアホの極みだ。勝てるはずもない。
なら、どうすればいい?
先輩冒険者たちは、此処から先をどうやって進んで「稼いで」いるのだろう?
「決まってるじゃない」
「……?」
「正面からは勝てない。だから僕らがすべきことは、正面から戦わずに連中の数を減らすことだよ」
「それって、まさか……」
エイルが口ごもり、キコリはクーンが何を言おうとしているかを正確に読み取る。
「野盗か」
「ま、そうだろうね。冒険者はそれを求められてる。薄汚くて卑怯な汚れ仕事。連中を少しずつ削れってことさ」
「……」
なるほど、確かにそうするしかないのだろう。
しかし、しかしだ。そうだとすると、懸念すべきことがどうしても出てくる。
誰もそれを考えていないなどとは思えない。
「どうするんだ? モンスターが『討伐隊』を組んだら」
野盗が暴れれば当然討伐隊が組まれる。当然だ。
どんな生き物でも文化を持ち統治体制があるなら当然のことだ。
「そりゃまあ……迎撃戦だよね。僕らには立派な防衛都市があるでしょ?」
ああ、なるほどとキコリは思う。
「そうまでして制圧したいってことか」
「理由までは不明だけどね。でも実際、そうやって制圧した地域もある……らしいよ?」
「理由が不明って……」
「キコリが言ったでしょ? たぶん踏み込んだらヤバい話さ」
確かに、それ以上は考えても何の意味もない。
キコリは気持ちを切り替えると、2人へと向き直る。
「作戦を立てよう。俺たちでもオークを倒して、生きて帰れる……そんな作戦を」
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