そんなのあったか……?
翌日。キコリたち3人は英雄門前に集合して荷物の確認に勤しんでいた。
「およそ往復4日程度を考えるとして、乾燥食料が必須ですね」
「寝具は?」
「要らないです。というか使えないです。不寝番かモンスター除けの道具が必要になってきます」
「エイルは作れないの?」
「モンスター除けはむしろ神官の領域だと思うんですが……」
「あ、僕は無理かな。月神はむしろ呼ぶ方だから」
主にエイルの錬金術師としての視点から要る物のチェックをして貰っていたのだが、キコリが知らなかったことがたくさんだった。
たとえば寝具の類は襲われた際にすぐに対処できなくなるので、汚染地域の探索には不向き。
特にテントの類は人類のものだと分かりやすく襲われやすい。
「汚染地域はモンスターの領域です。だからこそ、長期の探索は相当の負担になるわけですが……」
「あー、だから甘いのがよく売ってるんだな」
「干し果物ですか? そういうことみたいですね」
そう、防衛都市では干し果物がよく売られている。
そしてベテラン冒険者がよく買っているのも見受けられる。
たとえば干しレーズンなどは凄く人気のようだ。
「干し芋が売れるのも同じ理由ですよ。甘くて美味しいですからね」
「もしかして売ったことある?」
「……まあ、干し具合を見極めるのも錬金の技の1つといいますか……」
アハハ、と笑うエイルにクーンもニャハハと笑うが……そういう視点から見ると防衛都市は本当に「その為の街」なのだとキコリは改めて気付く。
様々な試行錯誤の末に、売られている物も洗練されていく。つまりは、そういうことなのだ。
「じゃあ僕達の場合も干し芋と干しレーズンを買っておけばいいかな」
「あとは水ですね。浄化の水袋が必要だと思います」
「あ、それなら僕作れるから普通の買えばいいよ」
言いながら、クーンは腰に提げている革袋を叩いてみせる。
なるほど、アレは水袋だったのかとキコリは今更ながらに感心してしまう。
日帰りだと必要ないので買わなかったが、確かにこれからは必要になる。
「確か汚染地域の水を飲んだら拙いんだったよな」
「そういうこと。モンスターには最適みたいだけど、僕らにはね」
確か「汚染地域」とはそもそも高濃度の魔力によるものらしいが……飲むことで体内の魔力バランスが崩れてしまうらしく、浄化の水袋はそれをどうにかしてくれる魔法がかかっているらしい。
「あとは寝具買わないならマントだよね。僕、宿にボロいの1つあるけど新調しようかなあ」
「いいですね。マント屋さん行きましょうか!」
「マント屋……? そんなのあったか……?」
知らない店がまだまだ存在する。あるいは見ていてもそうだと分からなかったのか。
キコリはクーンとエイルに手を引かれながら、マント屋へと向かっていく。
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