しっかり話し合って決めないとね
その無数の機材の中から、エイルが取り出すのは1つの種のような何か。
投擲されたソレはホブゴブリンにぶつかって地面に落ちると、一気にツルを伸ばし絡みつく。
「ギアッ!?」
「食肉植物プラカノ。簡単には取れませんよ」
自分に絡みつくツルをなんとか取ろうとするホブゴブリンだが、その間にエイルは2本の瓶を取り出していた。
1つには赤い砂のようなもの、もう1つには黒い水のようなもの。
「プロキアの熱砂、ヴォルカノン火山礫溶液……」
2つの瓶がキィン、と打ち鳴らされて。
エイルは赤い砂の中に黒い水を入れていく。
そうして出来上がったのは、赤く光り始める、どろりとした何か。
「完成! それっ!」
投擲されたそれはホブゴブリンに接触するかしないかという辺りでその輝きを強め……ドゴン、という凄まじい音と共に爆発する。
悲鳴をあげることすらなくホブゴブリンは倒れるが……同時にホブゴブリンに絡みついていたツルも燃え落ちてしまっている。
だが……ホブゴブリンは立ち上がっては、こない。今の一撃で絶命したというのだろうか?
「え……ええ……?」
ポカンとしているクーンをそのままに、キコリは油断なく斧を構えホブゴブリンに近づき……軽くマジックアクスを振り下ろす。
「……死んでる、な」
「どうです? 凄いでしょう!」
「ああ、凄い。でも……なんていうか、本当にお金かかりそうだな」
「うぐっ」
熱砂だの溶液だの危ない種だの、そんなものがタダで落ちているとも思えない。
現地調達するのでもなければ、結構お金がかかるはずだとキコリは思う。
「で、でも! 種子類は自主栽培できますし、結構強かったでしょう!?」
「ああ。正直、凄いと思った」
「それに、私が居れば薬草類の目利きでもできますし現地でお薬の合成も!」
「あー、それは僕も魔法節約できて助かるかも」
クーンがそう声をあげれば、もう結論は決まったのと同じだ。
「じゃあ、満場一致ってことで。よろしく?」
「は、はい! よろしくお願いします! あー、良かった! そろそろ宿代とか危険だったんです!」
「薬作って売ればよかったんじゃ……?」
「私1人じゃ赤字にしかならないですし」
誰かと組むことで真価を発揮するタイプなのだろう。
確かにキコリも薬草集めをやろうとしたからよく分かる。
それなりに奥まで行かないと、回収できる薬草なんかないに違いない。
「……とりあえず、今日の目標は薬草採取にするか」
「そうだね」
「助かります……!」
「でも取り分はしっかり話し合って決めないとね」
「まあ、そうだな」
「お手柔らかに願います……」
消耗品代というものがパーティに圧し掛かってくる以上、それは避けられないことだが……こうして、錬金術師のエイルが新しくパーティに加わったのだ。
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