いや、頼りになるけどさ
そして3人で進んでいくが……ちょっとした問題が発生していた。
「あ、ゴブ」
クーンが言い終わるより先に、キコリが「発進」してゴブリンをマジックアクスで両断する。
そしてやり終わった後に「あっ」とキコリが声をあげる。
「すまん……またやっちまった」
「いや、頼りになるけどさ」
そう、モンスターを見つけるとキコリが反射的に襲い掛かって倒してしまうのだ。
やらないようにしようと思っていても、モンスターを見つけると身体が動いてしまう。
そういうシステムが身体の中に組み込まれたとしか思えないような動き方だ。
「ダメだな。なんかこう、タガみたいなのが外れてる気がする」
「まあ、キコリはバーサーカーなんだから正しいっちゃ正しいけど。問答無用で襲い掛かるのはまた違う気もするよね」
「問答無用かっていうと、それも違う気がするんだよな。『一撃でいける』って思うと身体が動く気がする」
「逆に怖いんだけど」
「だよなあ。というか……これだとエイルの出番がない……」
エイルのお試しなのに、キコリばかり戦っていても仕方がない。
仕方がないが……だからといってエイルが不意を打たれて角兎に突き殺されても寝覚めが悪い。
その辺り、何も確認できていないのだ。
「大丈夫だとは思いますよ。この服も帽子も鎖を編みこんでありますし、角兎の攻撃くらいでなら簡単には死にません」
「そこを疑う気はないけど……」
「え、重くない?」
「めっちゃ重いです! 他にも色々仕込んでますし!」
そう言って笑うと、エイルは真顔に戻る。
「とはいえ、このままじゃ私の有用性を示せませんね……」
「なんかごめんな」
「いえ。ゴブリン相手にして『私使えますよ!』って言うのもなんか違う気もしますし」
「じゃあホブゴブリンか」
キコリがそう問うとエイルは「そうですね」と頷く。
「ホブゴブリンを1人で倒せるなら、仲間になれる実力があるって認めて頂けますよね?」
「俺はそれでいいと思うけど」
「僕も賛成」
「では、それで!」
エイルは頷くと、コートの内側から何かを取り出す。
それは紐のついた方位磁石に見えるが……。
「あれ? それって魔力計?」
「そうですよ。ホブゴブリン程の相手になれば強い魔力を持ってます。これで探れば……」
クルクルと回っている針が、ピタリと止まってエイルが「あっちです!」と叫ぶ。
これもマジックアイテムなのか、それとも錬金術による別の何かなのか。
その辺が分からないままキコリたちはその方向へと歩いて。
そうして、本当にそこに大剣を持ったホブゴブリンがいるのを見つけた。
「ギ? ギオオオオオオオオオオオオオ!」
同じように気付き咆哮をあげるホブゴブリンにキコリがマジックアクスを構えようとする横を、エイルがスタスタと歩いていく。
そして 翻すエイルのコートの中。
そこには無数の道具や試験管が収められている。
「では、お見せしましょう……錬金術士の戦い方を!」
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