結構かかるんです
錬金術師。そう聞いて、キコリとクーンは顔を見合わせる。
「俺、錬金術師のことはあんまり知らないんだが……クーンは?」
「えーっと。薬師みたいなものだったと思うけど」
「ヒーラーってことか」
「たぶんね」
「すみません。ちょっと違うんです」
申し訳なさそうに言うエイルに、キコリはちょっと考えた後に前に進み出る。
「えーっと……まず、俺はキコリ。こっちはクーン」
「あ、組んでくれるんですか!?」
「うお!?」
「押しが強いねえ」
アハハ、と笑うクーンを軽く睨むと、キコリはエイルに向き直る。
「今聞いての通り俺たち、錬金術師にはあんまり詳しくてなくて。で、アーチャーを探そうかという話もしてたとこでさ」
「そ、そう言わず! 聞いていただければ錬金術師がどれだけ役に立つか分かるはずです!」
「んー……」
「いいんじゃない? 僕、ちょっと興味出てきたけど」
「まあ、クーンがそう言うなら」
「ありがとうございます! まず錬金術師ですが……万能です!」
「ず、随分大きく出るなあ」
「本当です! 攻撃、防御、探索、回復……極めれば全部こなせるんです!」
それが本当なら凄いけど、とキコリは思う。
本当なら凄いが……アリアの話にも出てこなかったし募集でも錬金術師なんて単語は出てきていない。
かなり盛ってる可能性はあるんじゃないか……と思わざるを得ない。得ない、が……。
「そもそも、どうして俺たちなんだ?」
「え?」
「見ての通り、俺たちって男2人だし。エイルは女の子……だよな? 危なくないか?」
「はあ。でもそういうの心配するなら、そもそも冒険者とかやらない方がいいと思うんですよ」
「すごい正論で何も言い返せないけど……まあ、うん、分かった」
結構強いタイプの女の子なんじゃないかとキコリはエイルの評価を自分の中で修正しつつ、問いかける。
「で、何でも出来るって言ったけど」
「えっちなこと以外なら大概は」
「いや、言ってないし聞いてない。ていうかそういうのはちょっと」
「はい。今顔を赤くしてる辺りでキコリさんは安全だなって思いました」
「ほんと強いな……! いや待った。クーンは?」
「ちょっと残念そうでした」
「おいクーン……」
「僕一応神官だから。月神にかけて女の子が泣くようなことはしないって」
ちょっとクーンのその辺りの価値観は確かめとく必要があるんじゃないかなどとキコリは思うが、すぐに元の話題を思い出す。
「で、話を元に戻すけど。それならますます俺たちじゃない方がいいんじゃ? 言っとくけど、そんなに強くないぞ」
「でもアーチャー募集してたんですよね?」
「ああ。それが何か……」
「アーチャーみたいな金食い虫って言われてる職業募集してるくらいなら、錬金術師もいけるかなーって」
「……そう言うってことは」
「結構かかるんです、錬金術もお金。だから軒並み断られちゃって……でも、入れてくれるならそれ以上稼がせてあげる自信はあります、よ?」
お願いしますよー、と袖を引っ張ってくるエイルにキコリは困ったようにクーンと顔を見合わせ……「とりあえずお試し」ということで、エイルを加え出発するのだった。
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