俺を何だと思ってるんだよ

 そして、翌日。

 英雄門前に来たキコリとクーンは、互いの意見を交換し合っていた。

「やっぱり足りないのは攻撃力じゃないか? 魔法士とかいいんじゃないかと思う」

「総合力だと思うなあ。僕はアーチャーを入れるべきだと思う」

 互いにある程度意見を出し合って、出てきたのはそんな提案。

 後衛が必要だと思っているのは一致していて、思わず無言になってしまう。


「……そういえば前衛必要って言わないんだな」

「キコリの戦闘スタイルで下手な前衛入れて役に立つと思う?」

「いやほら、重戦士とかで防御力をさ?」

「ジャマでしょ。その人がキコリのミョルニルで真っ二つとかヤダよ僕」

「俺を何だと思ってるんだよ……」

「バーサーカー」


 ぐうの音も出ない反論にキコリは再度黙ってしまうが……見境なく攻撃してるわけではない。

 ないが……バーサークすると「邪魔だ」と思ったり踏み台にする可能性を完全には否定できない。


「……アーチャーを推すのはやっぱりアレか? 将来的な……」

「うん。元々アーチャーやるのって、そっち方面に才能ある人が多いしね」

「そうなのか? 単純に弓が上手いからとかあるんじゃないか」

「そういう人もいるかもね。キコリが魔法士推すのは破壊力重視だよね」

「ああ。打撃が通じなくても魔法があれば楽だろ?」

「ミョルニルで解決するんじゃない? アレもう魔法攻撃みたいなものでしょ」


 そうかもしれない。

 いや、しかしその度にミョルニルを使っていたらキコリが倒れかねない。

 

「アーチャーにしとこうよ、キコリ。絶対僕らに必要だって」

「うーん……いや、ていうか。やけに推すな……?」

「そりゃまあ。本気で必要だと思ってるしね」

「そっか。ならアーチャーでいいと俺も思う……けど」


 言いながらキコリとクーンは周囲を見回す。

 英雄門前は、その性質上仲間を探す呼び込みが非常に多い。


「魔法士募集中! こちらは盾戦士、剣士、神官の3人!」

「重戦士いませんかー!? こちらは魔法士2人です!」

「こちら神官です! 前衛を探しています!」


 色々な募集があるが……アーチャーの名は出てこない。

 それっぽい装備の冒険者も……居ない。


「なんでだ……? なんでアーチャーいないんだ?」

「可能性としてはお金かかるから、かな。ほら、矢の代金がさ……初心者には辛いよね」

「それ言ったら終わりって気もするんだが」

「うーん。どうしようねえ」


 キコリとクーンがヒソヒソ話し合っていると「あのー……」という声がかけられる。


「ん?」

「あ、かわいい女の子」

「え、クーンって美的感覚そっち寄りなの?」

「え? どういう意味?」

「獣人と人間で美的感覚結構違うって聞いた覚えあるんだが」

「そりゃそうかもだけど、僕こっち暮らしも長いし」

「あ、あのー!」

「あ、ごめん」

「ごめんね」

 2人で壮大に脱線しかけたところを引き戻され、キコリとクーンは素直に謝る。

 話しかけてきたのは、茶色の髪をショートカットに整えた女の子だったが……一見して職業が分からず、キコリは首を傾げてしまう。

 ちょっとダボッとした分厚めの服に、編み上げブーツ。

 肩掛け鞄も持っているようだが……ポーターだろうか?


「私、エイルです! 錬金術師なんですけど……その、パーティ組んで頂けないでしょうか!」

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