想像以上に

 キコリとクーンがそのまま奥に進むと、森の様子が様変わりするのが分かる。

 木が切られ、何やら簡易的な壁や門のようなものが出来ているのだ。

 それは英雄門をも思わせたが、もっとチープなものだ。

 そして、何よりも。


「壊れてる……な」


 そう、バキバキに壊されていた。

「陥落した砦」というのが一番妥当な表現であるようにキコリには思えた。


「そりゃあね。こんな所に砦なんか造られたら、そりゃ皆壊すよ」

「それもそうだな」


 どういうつもりでモンスターが此処に砦を造ったのかは想像するしかないが、英雄門のようにはいかなかったらしい。

 此処を再利用するにしても、全部建て直さなければ無理だと思えるような、そんな状況だった。


「じゃあクーン。ちょっと此処に」

「うん」


 とはいえ、念には念を入れなければならない。

 クーンをその場に残し、キコリが壊れた門を通ると……その陰から、斧が振り下ろされる。

 だが、キコリはすでにそこには居ない。


「ギッ……グギャッ!?」


 マジックアクスを叩きつけられたホブゴブリンが姿勢を崩し、キコリの斧を頭部に受ける。

 ガヅンッと。激しい音をたててホブゴブリンは絶命し、周囲にとりあえず何もいないことを確認してキコリはクーンを呼ぶ。


「もういいぞー」

「うん。やっぱり何かいた?」

「ホブゴブリンが1匹。まあ、来ると分かってれば簡単だよな」

「僕ら、この前ホブゴブリン相手に苦戦したばっかりなんだけどなあ」

「ジェネラルに比べるとザコだからなあ……」

「流石に今のキコリと模擬戦とかするつもりにはならないよ」


 苦笑するクーンに、キコリはまあ、そうかもな……などと思う。

 想像以上に自分は強くなっている。

 ホブゴブリン相手にウォークライすら使う必要がなかった。

 それはクーンの言う「魔力が筋力になっている」ことが関係しているのだろう。

 しかし同時に、それが通じない相手には今後「チャージ」を使わざるを得ない場面が増えるだろうということでもある。

 まあ、それ自体はあまり問題ではないが……。


「それにしても、想像以上になんていうか……」

「前線基地って感じだよね。廃墟だけど」


 崩れた家。かまどの残骸のようなものもある。

 ゴブリンたちがここで生活を営もうとしていたことが分かる造りだ。

 とはいえ、1日で造れるような規模でもない。


「たぶん、これを巡っても相当大きい事件があったんだろうな」

「だろうね。先輩方に感謝だ」


 よく見るとかまどを最近使ったような跡があるが……先輩冒険者が野営でもしたのか、それともこの前のゴブリン軍が使っていたのか。

 

「……ま、いいか」


 どちらにせよ、放置して問題が出るものでもない。

 キコリとクーンはそのまま、廃砦を通り抜けていく。

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