今後どうしていくんですか?

「まあ、でも機械文明……でしたっけ」

「はい」

「キコリのその話を聞くに、『前世の世界』っていうのは1つじゃなさそうですね」

「そうなんですか?」

「ええ。まあ、その辺は非常にどうでもいいんですけど」


 チャーハンをパクつくアリアの前に座り、キコリも自分の分のチャーハンを食べる。

 そうして考えてみると「まあ、当たり前か」という気分にもなってくる。

 何しろ異世界なんてものが……いや、今のキコリで考えると「キコリの前世が暮らしていた異世界」が存在するのだ。

 ならば、そうではない異世界が存在したところで何の不思議もない。

 そして、それはキコリの今には何の関係もないのもまた、確かなことだった。


「でも、そんなに転生者が特別な力持ってるなら、俺にも何か1つくらいあっても良さそうですけどね」

「あれば幸せってものでもないように思いますけどね」

「そうですかね?」

「そうですよ。過去に英雄だの天才だのって呼ばれた内の何割かは前世持ちだって話もありますけど、大抵はロクな死に方してませんからね」

「……」


 この家の中にも、明らかに前世持ちの残した陰が幾つかある。

 調理道具などの生活用品は、特にその影響が顕著だ。

 きっとお金も名声も手に入れたのだろうが……。


「まあ、俺にそんな才能があったら……どうだったかな。それでも此処に流れ着いてたのかな……」


 分からない。

 けれど、何か突出した才能があったら前世の記憶に振り回されることもなかったのだろうか?

 分からない。

 けれど……今更という気もして、キコリは溜息をつく。


「ま、いいじゃないですか。そのおかげでキコリは私と出会えたんですし?」

「それについては感謝してます」


 えへん、と胸を張るアリアにキコリは笑う。

 確かに……キコリは何も無かったから此処に流れ着いて、アリアに出会った。

 それ自体は、今の人生で最大の幸福だったと言えるだろう。


「そうですよ。たっぷり感謝してくださいね?」

「勿論です」


 そう言って笑いあって……そうしてチャーハンを食べ終えた頃、アリアは「さて」と言ってスプーンを置く。


「モンスターの分布も元に戻り始めたみたいですけど、キコリは今後どうしていくんですか?」

「どうっていうのは」

「クーンさんと引き続き組むっていうのは聞きましたけど、それだけじゃ今後何をするにしても足りないっていうのは分かっていますよね?」

「それは……まあ」


 クーンは月神の神官だ。

 前回の戦いでかけてくれたルナイクリプスやヒールなど、キコリに必要なものを持っているが……あと足りないものというと何だろうか?

 足りないことは分かっていても、具体的に何が足りないかと言われると「全部足りないのでは」と思ってしまうのだ。

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