次は、一緒に行こう
英雄門の防衛戦から半日。
ゴブリンジェネラルが倒れ、ほぼ壊滅状態に陥ったゴブリン軍の残りも森の奥へと逃げ去った。
倒したゴブリンたちの死骸からは角兎の肉らしきものが見つかっており、食料にされた結果一時的に居なくなったように見えたのでは……というのが防衛都市の見解となったようだ。
つまり、今回の件が終わったことで英雄門の向こう側のモンスターの分布も元に戻っていくだろう……と推測されている。
「ていうのが、今回の顛末かな」
「なるほどな。しかし同じモンスターなのに食料とかにしちゃうんだな」
「そういうもんだよ。僕らと動物の関係に近いんじゃない?」
「……凄く納得できた」
防衛戦が終わった後、気絶するように倒れたキコリは診療所に運び込まれたわけだが……そのベッドの上で、キコリはクーンから今回の戦いの顛末を聞いていた。
どうにもキコリは今回の防衛戦における功労者であるということで、最優先で治療を受けたらしい、のだが。
「それにしても結構危なかったらしいよ。オーバーマナで倒れたとかって僕、無茶な魔法修行してる連中以外で初めて聞いたよ」
「魔力限界超過現象、だっけか」
「うん。限界まで魔力を使うことで魔力の成長を促すとか、そういう修行をする連中がなるものだけど……キコリの場合は、まあ」
「ハハハ……」
クーンの視線の先。そこにはバーサークメイルと名付けられた鎧や斧が置かれている。
あの鎧にあるチャージ機能を乱発した結果、そうなったわけだが……リザードランナーの魔力を吸収できたせいで、予想以上に乱発できたというのもあるのだろう。
「でもまあ、それなら俺の魔力も多少は成長するんだよな」
「どうだろうね。限界突破論には否定的な人も多いし。元々ある成長の限界分まで成長を前借りしてるだけだっていう人もいるよ」
どちらにせよ成長できるならキコリとしては万々歳なのだが……それを言える雰囲気でもない。
「……ま、何にせよ。生きててよかったよ、キコリ」
「ああ。クーンも無事でよかった」
キコリが言えば、クーンはなんとも複雑そうな表情になる。
「無事、か。確かに無事ではあるけど。あの時、やっぱりキコリと行くべきだったって後悔してるよ」
「……クーンのルナイクリプスがあったから、俺は普段以上に戦えたんだ。それは間違いなくクーンの成果だろ」
「ありがと。でもね、これは単なる仲間としての責任感の問題さ。僕は、それを放棄した……許されていい事じゃない」
「アレは俺の我儘だ。クーンが付き合う義務はないだろ」
「ないね。でも、それでも僕は一緒に行くべきだったと思ってる」
黙り込むクーンに……キコリは、静かに手を差し出す。
「なら、次は一緒に行こう。それでいいだろ?」
差し出されたその手を、クーンは少し悩んだ後に、しっかりと握る。
「……そうだね。次は、一緒に行こう」
目の端に浮かんだ涙を拭うと、クーンは「さて」と立ち上がる。
「じゃあ、僕は今日のところは帰るよ。退院したら一緒に冒険しよう、キコリ」
「ああ……って、もう行くのか?」
「うん、行くよ。さっきから……その、圧が凄いから」
クーンのさらにその先。部屋の入り口から覗いている人物を見て……キコリは思わず苦笑していた。
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