同じである必要はないんですからね

「ふーん、魔法ですか」


 買ってきた食材でシチューを作りながら、アリアはそう呟いた。


「はい。何か……分かりやすい攻撃手段が必要だってのは痛感しましたから」

「ま、そうでしょうね。ソードブレイカーを選んだ時点で渋いなあ、とは思ってましたし」

「思ってたんですか……」

「ええ、まあ。ですけど、それに何か言ってキコリの発想を狭めるのも嫌でしたし」


 余程ダメな事言えば止めましたけどね、と笑うアリアの手は全く止まっていない。

 というか、キコリの前世知識など出番もない程の手際の良さでシチューが出来上がっていくのにはぐうの音も出ない。


「やはり攻撃魔法……ですよね」

「あのブレイク、とかいうのも素晴らしい魔法ですけどね。頭の中にダメージ与えたんでしたっけ? それも素晴らしいと思いますよ。理解されるかは別の話ですけど」

「……ですよね」

「そういう意味では、キコリが一番イメージしやすい攻撃魔法を選ぶのがいいと思いますよ」

「イメージしやすい、ですか」


 どういう魔法ならイメージしやすいだろうか?

 土ならやはり石礫?

 風なら竜巻とかだろうか。

 水は……放水? 違う気もする。

 やはり魔法の教本に頼った方が良さそうだ、とキコリは思う。

 過去の実績があるから教本に載るのであって、大人しくそれを学んだ方がいい。

 ……と、そこまで考えて。

 キコリはふと、ミルグの言葉を思い出す。

 アリアとキコリの戦闘スタイルが同じだという、そんな言葉。

 実際、ウォークライはキコリの戦闘の中核になっている。

 ならば……アリアが使う魔法もまた、自分に合うのではないだろうかとキコリは考える。


「あの、アリアさん」

「はい? あ、牛乳とってください」

「あ、はい」

「ありがとうございます。で、なんでしょう?」


 鍋をかき混ぜているアリアに、キコリは「今の魔法の話なんですけど」と切り出す。


「アリアさんは、どんな魔法を使ってたんですか?」

「私ですか?」

「はい。アリアさんが使ってた魔法なら俺にも合うかな……って」


 キコリがそう言うと……アリアは鍋をかき混ぜる手を止めて、キコリの顔を覗き込む。


「さては誰かに何か……ミルグさんですね? 戦闘スタイルが同じだとか吹き込まれたでしょう」

「うっ」

「まったくもう、あの人は。別に私とキコリが同じである必要はないんですからね?」

「はい、それは分かってるつもりです」

「ならいいんですけど。まあ、いいです。私が使ってたのは、んー……一番多かったのはミョルニルですかね」

「へ?」


 なんだか微妙に聞き覚えのある単語に、キコリは思わずそう聞き返す。


「複合付与魔法ミョルニル。過去に名を残した天才の1人が遺した魔法ですね」

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