でも、その方がいいかもね
キコリとクーンは、冒険者ギルドでイレーヌに今日あったことを報告していた。
「なるほど、キコリさんの魔法で……」
「はい。なんか疑われちゃいましたけど」
クーンが酷いですよね、と言うとイレーヌは難しそうな表情になる。
「しかし、それは……少し拙いかもしれませんね」
「討伐が認められない、ということですか?」
キコリがそう聞けば、イレーヌは「そうです」と答える。
「その……えー、ビッグゴブリンの死体を運んできたのは貴方達2人です。だから、その功績は間違いなく認められます」
「でも、討伐は認められないかもしれない。外傷はないから」
「その通りです。キコリさん……こう言うのも正直どうかと思いますが、もう少し派手に殺せなかったんですか?」
「俺だって派手に殺せるならそうしたいですけど……魔力の都合です」
「……なるほど」
イレーヌは頷くと「そういえば」と声をあげる。
「頭に直接損傷を与えるなんて、よく思いつきましたね」
「ええ、まあ」
「ですが……」
「あまり言わない方がいいんですよね。俺も言いたくないです」
「申し訳ありません。しかし今回の場合は事実確認に必要ですから」
「でも認められないかもしれないんですよね」
「はい」
なんとも理不尽な話だとキコリは思う。
つまり「キコリには外傷無く相手を殺せる魔法があるかもしれない」という疑惑だけをバラまいて終わるかもしれないのだ。
「……別の魔法覚えようかなあ」
「僕はあの魔法いいと思うけど……でも、その方がいいかもね」
しかし、別の魔法を覚えるにしてもどうしたものか。
それよりはもっと強い武器を手に入れて「言い訳の効く傷」をつけられるようにした方がいいのでは、ともキコリは思うのだ。
「今回の報告に関する報酬ですが、実際の貢献度の測定もしますので……そうですね、2日後に来るとよろしいかと思います」
「分かりました」
そう言ってキコリとクーンはカウンターを後にする。
流石にこの後また冒険に出る程の元気はないし、解散でもいいのだが……。
「クーン。俺、ちょっと下に武器見に行くけど。どうする?」
「あ、じゃあ僕も行くよ。色々見てみたいし」
そうして階段を下りていくと、アリアがキコリを見つけてパッと顔を輝かせ走り寄ってくる。
「キコリ! どうしたんですか? 私を迎えに来たんですか?」
「うわあっ!?」
抱き着かれて慌てるキコリだが、アリアはキコリの背後で「わーお」と言っているクーンを見つけて目を細める。
「……何見てんですか。見せ物ですよ」
「そこは見せ物じゃない、って言うべきなんじゃ!?」
「折角ですから。なんですかキコリは嬉しくないんですか?」
「嬉しいから困るんです……」
「なら良し!」
満足そうに離してくれるアリアから離れて、キコリはよろよろと壁に手をつく。
「……何1つ良くない……」
「抱きしめられたときの感触とか良かったんじゃない?」
「怒るぞクーン……」
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