アレを殺せる魔法は
翌日。キコリとクーンが正式に組んでの冒険が開始する。
人間より感覚が鋭いというクーンを先頭に歩くが……やはりゴブリンは出てこない。
それどころか、ホブゴブリンすら居ないのだ。
「居ないな……」
「うん。角兎すら出てこない。ちょっとおかしいな……」
ベテランが片っ端から狩ったにしても、これは少しばかり何か妙な気がする。
原因を考えて……キコリが思い出すのは、前に会ったオークの事だ。
「そういえば前にオークがゴブリン殺してたけど、何か関係あるのか……?」
「その話、キコリ絡みだったんだ……」
「ん、まあ」
「でも、どうだろうね。そもそもモンスター同士で殺しあうってのは、それ自体が異常だし」
それは、昨日キコリもアリアの家で本を読んで知っている。
「モンスターは全ての種族が統率されている……だっけか」
「正確にはその可能性がある、だね。魔王論は否定する人も多いけど、僕は結構可能性はあると思うな」
「モンスターを統率する魔なる王か……居たとして人類の敵なのは間違いなさそうだけどな」
「確かにね」
クーンはハハッと笑い……突如、ピクッと耳を動かし周囲に視線を巡らせる。
その反応にキコリも斧と丸盾を構え周囲の気配を探る。
「……キコリ、警戒を。何か来る」
「なんだ、この音……」
ズルズル、ベチャリと。何か湿ったものを引きずるような音。
明らかに通常の何かではないソレは、初めて聞く音で。
しかし、何か……急いでいるように、キコリには聞こえた。
「クーン、逃げよう」
「え」
「何かヤバい。迎え撃ったらダメな気がする!」
クーンの腕を引いて、キコリは森の外の方角へと走る。
その少し後。ほんの少しまでキコリ達が居た場所に、半透明の「何か」が津波のように溢れてくる。
「あれは……スライム!? 嘘でしょ、本でしか見たことないよ!?」
「俺も昨日本で見たばっかりだよ! 確か物理攻撃はほとんど通じないんだろ!」
「うん、それに……スライムは生き物を殺すことが最も得意な生き物。一撃で消し飛ばさないと、こっちが溶かし殺される!」
スライム。強力なモンスターであり、生物を殺す為に生まれたかのようなモンスターである。
相手を捕える術と、フル装備の鎧騎士をも隙間から消化液を注入し溶かす……つまり「生き物を殺す」プロである。
当然ながら、こんな場所に居ていいモンスターではない。
「……一応聞くけどクーン! アレを殺せる魔法は!」
「ない! キコリは!?」
「たぶん効かない!」
走りながらキコリとクーンは情報交換しあう。
その理由は。
「なんでアレ追ってくるんだよ!?」
「分かんない! でも凄い速い! ヤバい、ヤバすぎる!」
スライムが、キコリ達を追ってきているからだ。
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