そんな妙な思考はしてない
「キコリ! とりあえず木の上の叩き落としといて!」
「分かった!」
木の上にいるゴブリンは弓は持っていないようだが、見張り役をしているのは明らかだ。
増援でも呼ばれれば、こちらの不利が加速する。
だからこそクーンに応えキコリは木へと走る。
「ガアアアアアアア!」
「おおっと悪いね、お前は僕が相手だ!」
キコリに向かって吼える手甲ホブゴブリンにクーンは一跳びで接近し、鉄杖を振るう。
ガン、と腕を狙い当てる一撃に手甲ホブゴブリンは警戒したように距離をとる。
「胸部、腹部、腕、頭、それと……腰か。ガッチガチじゃん……よっぽど金的痛かったんだなあ」
鎧の無いところに当たれば痛いし金的は凄く……凄く痛い。
言ってみれば、その痛みに負けたのが悔しいのだろう。
格闘主体とは思えない重武装っぷりに、クーンは思わず苦笑してしまう。
「オラアアアアアアアアアアアア!」
ガアン、と。響く音に手甲ホブゴブリンがビクリと内股になりながらキコリのいる方へと振り向く。
そこには木に斧を叩きつけてゴブリンを木ごと叩き落としているキコリの姿があったが……それは、まさにチャンスだった。
ドゴン、と。兜の隙間、手甲ホブゴブリンの鼻を狙いクーンは鉄杖で突きを入れる。
「ブゲアッ……」
「せいっ、やあああああああああ!」
顔面を的確に狙うクーンの「突き」のラッシュ。
最初の一撃が効いたからこその連続攻撃だが、顔面がボコボコになった手甲ホブゴブリンは顔面を手甲でガードしながらよろめく。
しかし、その隙を逃すクーンではない。鎧に守られていない個所を狙い鉄杖を打ち込んでいき……ふと気づき、思いきり横へと跳躍する。
そこには、手甲ゴブリンの背後に回っていたキコリの姿。
大きいといってもホブゴブリンの大きさは人間の大人程度。
故に……キコリの斧のフルスイングに、鎧の上からでも伝わる衝撃に、ホブゴブリンは吹っ飛ぶようにして転がる。
「うわあ……」
慌てて立ち上がろうとするホブゴブリンの、その首に……再度のキコリのフルスイングが放たれる。
流石に一撃で首を飛ばすことなど不可能だったが……それでも、その攻撃はキコリとクーンの勝利を確定させる一撃となった。
そうして、倒れた手甲ゴブリンの装備を剥がして魔石を回収しながら、クーンは「流石だねえ」と笑う。
「斧持ちだからそうかなあ、とは思ってたけどさ。凄いね、モンスターを木に見立ててるの?」
「いや、そんな妙な思考はしてないんだが……」
「そう?」
「そうだよ。なんだよモンスターを木に見立てるって。怖ぇよ」
「うん。だからちょっとヒいてた」
「怒るぞ……」
「あははっ」
笑うクーンだが……キコリからしてみれば、クーンの方がずっと凄いと思うのだ。
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