キコリは僕と合うと思うんだよね

「クーンの方が凄いだろ」

「え? なんで?」

「なんでって。1人でホブゴブリンを圧倒してただろ?」


 キコリであればウォークライを使い、斧でなんとか叩き切るくらいしか出来ない。

 しかしクーンには技がある。

 兜の隙間を狙いボコボコにしてあるのが、キコリにもよく分かった。


「んー」


 しかし、クーンは微妙そうな表情で笑う。


「そこは見解の違いかなあ」

「見解の違い?」

「うん。僕はさ、そんなに力がない方なんだよ。獣人としてはね」


 獣人にも色々いる。

 獅子の獣人、サイの獣人、ネズミの獣人……色々いるが、猫の獣人はその中でも結構半端とされている。


「これは猫の獣人全体に言えることなんだけど、動きは良くてもスピードが足りなくて力も足りない。技に頼るしかないんだ」

「そうは見えないけどな」

「あははっ、ありがと。ま、そんなわけで向こうじゃ大成が難しくてね。こっちに来たんだけど」


 言いながら、クーンは手の中でホブゴブリンの魔石を転がす。


「こっちはこっちで怪しげな猫獣人の出番は中々なくてね」

「怪しげって」

「ほら、普人の国って大体は大神を信仰してるだろ? 僕は月神を信仰してるから、中々合わないんだ」

「ええっと……?」


 キコリは必死で故郷の神殿のことを思い出す。あの神殿では何を祀っていたんだったろう……?


「ごめん、その辺分からん。不勉強ですまん」

「え、お休みの日にお祈りとか行かなかったタイプ?」

「そういう生活の余裕がなかったタイプ、だな……」

「なんかごめん」

「いいよ、別に」


 本当に申し訳なさそうに言うクーンだが、キコリは本当に気にしていない。

 神様がどうとか、正直ほとんど興味がないのだ。

 転生なんてものがあるのだから、神様だっているのだろうが……愛されているとも思えない。


「でも、そういう問題とかあるんだな」

「そりゃあるさ。神殿によって教えてる魔法も違うしね」

「ん?」

「ん?」


 互いに顔を見合わせ、首を傾げる。


「魔法って本で勉強するものじゃないのか?」

「え。あ、そっか。そういうの全部知らないんだ」

「ええ……もしかして知らないとマズいやつか?」

「別にマズくはないけど……えーと、そうだな。神官はどの神様の神殿で習ったかで出来る事が少しずつ違うってことかな」


 後ろからそっと寄って来ていたゴブリンに鉄杖を振り落とし地面に沈めると、念のため何度もガンガンと突いてトドメを刺し、笑う。


「ま、そういう意味ではキコリは僕と合うと思うんだよね。月神神殿の魔法って、結構クセの強いのが多いから……さ」

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