逆に怪しくなってきた
「え……いや、それはいいや」
「ん?」
「それで怪我しても金が減るだけだし……怪我しなくても稼げる時間減るし……」
「んん-!? 実力疑ってるって言ったの君じゃん!?」
「それはそれっていうか……」
「実は結構自分勝手だろ君!? いや僕も人の事言えないけどさ!?」
実際、訓練で怪我している余裕はキコリにはないのだ。
そんな余裕があれば、その分稼いだ方がいい。
というか、そもそもだ。
「それに……人間相手の実力なんか、モンスター相手じゃ関係ないだろ」
事実、冒険者ギルドに居た面々でキコリが勝てる相手がいるかといえば疑問だ。
しかし、そんなキコリでもゴブリンの頭は割れる。
そして角兎のような人間以外の形のモンスター相手では人間相手の戦術など無いも如しだ。
「俺は、俺より強い人じゃなくて、俺より狩れる人と組みたいんだ」
「……ふーん?」
クーンはキコリの前に回り込み、ニカッと笑う。
「正論だ。僕もそう思う」
「ああ」
「じゃあ、明日は英雄門の前で待ち合わせよう」
「ええっと?」
「狩りの実力を見れば互いに納得って話だろ? お互いの相性も確認できれば最高だ」
「それは、まあ」
「だから明日、お試しに一緒に行こう。それで互いに納得できる答えが出る」
確かにそれは、キコリとしても話が早い。
クーンの実際の戦い方だって、参考になる部分があるはずだ。
それにここまで買われて、悪い気がしないのも確かなのだ。
「ああ、分かった。朝一番でいいんだろ?」
「勿論さ。今日はこのまま冒険者ギルドで換金だろ?」
「まあ、そうなる」
「じゃあ、そこまでは一緒だ。色々話しよう」
「俺、あんまり話題ないぞ」
「いーや、意外とあるものさ。たとえば、そうだね。兄弟とかいる?」
クーンは実に話し上手で、冒険者ギルドに着くまでの間にキコリはすっかりクーンと打ち解けていた。
「……なんか、話しやすいなクーンは」
「だろ? 親しみやすいネコであることを心掛けてるんでね」
「なんかこう、逆に怪しくなってきた」
「あはは!」
クーンが笑い、キコリが笑う。
実際組むかどうかはさておいても、クーンという猫獣人がかなり良い人であることは流石のキコリにも分かっていた。
そして……よく見てみれば、獣人はチラホラとではあるがそこらへんにいた。
フードや兜を被ったりしているせいで分かりにくいというのもあるのだろうが……。
「なあ、クーン」
「うん?」
「やっぱりというか、なんというか……この町って俺と同じ種族の比率、高いよな?」
「あー、普人? まあ、そうだろうね。此処は普人の国の防衛都市だし」
「……なるほど」
後でアリアに聞いてみよう。
そんな事を考えながら、キコリは頷いていた。
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