可能性はまだ、残っている
なら、戦うしかない。投擲は悪手だ。あの手甲のホブゴブリンに使われでもしたら最悪だ。
とはいえ、警戒すべきはハンマーも斧もだ。どちらもキコリを簡単に致命傷にするだろう。
普通にやっては、勝てない。勝てないが……逃げられもしない。
「ああ、最悪だ。でも、やるしかないよな」
キコリは息を吸い込む。
これをやれば、他のモンスターを呼ぶ可能性もある。
けれどどの道、此処は死地だ。最悪がもっと最悪程度になった程度で、何が変わるものか。
だから、殺すと。殺してでも殺してやると、殺意を高める。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
ウォークライ。ビリビリと震える空気に……ホブゴブリンが僅かに震えたのを、キコリは見た。
走る。笑う。ああ、そうか。こいつ等はオークよりずっと弱い。
キコリよりは強いが、オーク程の絶望ではない。ならば、やれる。
可能性はまだ、残っている。
キコリは手甲のホブゴブリン相手に斧を振り下ろす。
「ギッ……」
危なげなく手甲で斧を受け止めたホブゴブリンの股間を蹴り抜き、振られた斧とハンマーをバックステップで回避する。
投げたナイフが斧のホブゴブリンの肩に刺さり、斧ホブゴブリンが悲鳴をあげる。
ナイフを更に1本投げようとして。槌ホブゴブリンの蹴り飛ばした土がキコリの視界を塞ぐ。
「ぐっ……があ!」
ドゴン、と。凄まじい音をたてて槌ホブゴブリンのハンマーがキコリを吹っ飛ばす。
着けている鎧があって尚感じる、激痛。
地面に転がり、木にぶつかって。キコリは全身に激しい痛みを感じる。
立ち上がろうとして、転んで。その頭上を、怒り狂う斧ホブゴブリンの斧が通り過ぎ、木を切り倒す。
やはり凄まじいパワーだ。キコリではこうはいかない。
今キコリが転んでいなければ、そうなるのはキコリだったはずだ。
横に転がって、追撃を躱して。なんとか立ち上がり、斧を構える。
膝が震える。腕が痛い。斧が重い。視界が霞む。
だが、それでもまだ死んでいない。
ならば、と前に進んで。斧ホブゴブリンに蹴られ、再び地面に転がる。
斧も、手から離れて。丸盾は……何処にいっただろうか?
そして見えるのは、こちらに向かって歩いてくる斧ホブゴブリンの足。
死ぬ。死んでしまう。もう、どうしようもないのか。
否、否。ここで死にたくなんかない。
近づいてきた斧ホブゴブリンの足を、掴んで。
めんどくさそうに払われかける、その瞬間。
キコリは……その足へと、魔力を籠める。
「……ブレ、イク」
バン、と音が響いて。片足を失った斧ホブゴブリンが、バランスを崩しその場に転倒した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます