それはたまに使う人いますね
「独自の魔法、ですか」
「ええ、この本に載ってますよ。えーと、グングニルにグラム、スルトブレイド……」
「なんか凄そうですね」
絶対転生者だそいつ、と思いながらキコリは頷く。
しかも魔法に神話の武器の名前をつけるあたり、かなり自分の魔力に自信があっただろうことが伺える。
「見てみます? 他の人間にはロクに再現できない魔法ってことで有名ですけど」
英雄ショウに関する考察、と書かれた本には彼が開発した魔法に関する諸々が書かれていた。
巨大な魔法の槍を発射し、着弾地点に大爆発を起こす魔法グングニル。
使い方、相手を打ち砕く槍をイメージし、魔力を籠めて放つ。
注釈、同系統の魔法ボムズランスの派生と思われる。
魔法の刃を放ち敵を切断する魔法グラム。
使い方、相手を切断するイメージを思い浮かべ、魔力を籠めて放つ。
注釈、同系統の魔法マジックセイバーの派生と思われる。
巨大な炎の刃を打ち下ろす魔法スルトブレイド。
使い方、以下略。
注釈、この魔法に関しては英雄独自の発想があったものと思われる。
なお、スルトなるものの語源については本著の執筆時にも明らかになってはいない。
(……やっぱり転生者だな。それにしても……)
そう、それにしてもキコリとの差があり過ぎないだろうか?
そんな既存の魔法を独自魔法と言い張れる程に魔力があるとか、あまりにも羨ましい。
それだけ誇れるものがあれば、キコリも転生前の記憶を疎ましくは思わなかっただろうに。
「なんか、魔法の使い方がイメージして魔力を籠めて放つ、の一択に感じるんですが」
「それもあまり参考にならない理由なんですよねー。魔法はイメージ力っていうのはよく言う話なんですが、イメージ力に偏り過ぎて安定性が考慮されてないんです」
「ええっと……」
「同じ剣を振る動作でも、ケンカ殺法と正統剣術では安定度が違うでしょう?」
「あ、なるほど。でもそれって、なくてもいいってことじゃ」
「究極的には。使えりゃいいのは間違いないですから」
頷きあうアリアとキコリだが、この2人が特殊な部類であるのもまた事実ではある。
何しろ、街中には対モンスターを前提にした武術を教える道場だってちゃんとあるのだ。
……まあ、創設者は冒険者なのでケンカ殺法の派生であるのは否定できないが。
「と、すると俺頭良くないし、イメージで使った方がマシそうですね」
「そういう人もいますねー。私もどっちかというとイメージ寄りですし」
そんな会話をしながらページを捲っていくと、この派手さ重視の魔法の中ではちょっと珍しい方向性の魔法も出てくる。
「ソードブレイカー……」
「あ、それはたまに使う人いますね。再現が比較的容易いんですよ。まあ、効果も御察しですけど」
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