随分昔の話らしいですけどね
そうして戻ったアリアの家で、キコリはアリアに「魔法?」と聞き返されていた。
「はい。俺にも使えるかなって」
「ふーん。まあ、キコリも魔力は少なめですけどあるみたいですし、使えるでしょうね」
言いながら、アリアは本棚から幾つかの本を取り出す。
それはどれも魔法の本であるようで、アリアは机の上にそれらを並べる。
「といっても、さっきのキコリの話を聞く限り攻撃魔法ですよね? ゴブリンシャーマンが使ってたみたいな」
「はい」
そう、今日キコリが倒した大型ゴブリンはホブゴブリンというゴブリンの上位種、杖ゴブリンもゴブリンシャーマンというゴブリンの上位種であったらしい。
先日のオークに続いてそんなものがウロウロしているということで冒険者ギルドは結構な騒ぎになっていたが……それはさておこう。
「うーん、攻撃魔法……キコリの攻撃スタイルは前にちょっと見ましたけど、基本的に一撃必殺ですよね」
「けど、それだとオークには勝てないので、どうにかしないとって思うんです」
「うーん。そうは言いますけどねえ。魔法ってたぶんキコリがイメージする程便利じゃないんですよねえ」
言われて、キコリは今日会った杖ゴブリン……ゴブリンシャーマンのことを思い出す。
あいつも、魔法を2回しか使えなかった。
「それは、俺の魔力が弱いからですか?」
「というよりも、魔法って基本的に魔力のぶつかり合いなんですよね。筋力と同じで、力負けすると全然効かないんです」
たとえばオークと真正面から殴り合えばキコリが一方的に負けるように、魔力の強い相手に魔法をぶつけても無傷ということはよくある話で、魔法頼りの魔法使いがたまたま「魔力だけ」強いモンスターに会って手も足も出ずに嬲り殺されるというのは、よくある話なのだ。
それも戦士であれば新人冒険者でも一方的に嬲り殺しに出来るモンスター相手に……といえば、それがどういうことかよく分かるというものだ。
「ちゃんと測らないと分からないですけど、たぶんキコリに魔法使いとしての適性はあんまりないんですよねー。魔力がたっぷりあるなら、かの天才魔法剣士みたいな戦い方も出来たんでしょうけど」
「天才……魔法剣士、ですか」
その天才というワードは前にも聞いたが、また転生者の類だろうか、とキコリは思う。
「お、興味ありますか? 随分昔の話らしいですけどね……えーと、500年以上前? 独自の魔法を色々開発した天才がいたらしいんですよ。まあ、魔力任せだから新魔法と呼ぶにはアレだったらしいんですけど」
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